論説-1:小型衛星カンファレンス参加報告(葛岡)・・別途配布済
別途配布済の参加報告を参照願います。
論説-2:激化するスペースXの周波数スペクトル獲得戦線(大石)
衛星を利用した宇宙事業を展開する上では、どのように「素晴らしいビジネスプラン」及び如何に「潤沢な資金」を有していても、周波数スペクトルを確保及び維持できないことには、絵に描いた餅になる。卑近な譬えを用いると、各スペクトルの下には、お金がぶら下がっており、スペクトルの確保可・否は、各事業者の事業開始・存続を決定付ける重要なファクターとも言える。
従って、衛星事業においては、スペクトル確保をめぐって衛星事業者間、あるいは、地上通信事業者などとの間で、時には熾烈な争いとなる。
筆者も以前、周波数スペクトルを巡る10カ国による多国間会議に参加する機会があった。その際には、激しい応酬があり、会議途中で「これ以上、互いにnasty word(汚い言葉)を使うのは止めよう」という発言が飛び出すまでに至ったことがある。
別に周波数を巡る争いは特定企業に限ったものではないが、現在、宇宙業界における話題の中心の1つであるスペースXが関連すると、なにかにつけ、余計に注目されることになる。最近の報道の中で、スペースXが関わる大きなスペクトル獲得に向けた戦線には、下図に示す「地上5G事業者とのKu帯を巡る対立」と「GEO衛星事業者 とのKa帯を巡る対立」がある。
例えば、上図に示すように、スペースXは、Viasatとの争いの中で、Viasatのインマルサット買収及び同買収に伴う事業拡大を阻止、あるいは、牽制しようとしている。反対に、Viasatは、スペースXのスターリンク衛星によるネットワーク拡大を阻止しようとしている。すなわち、単純なスペクトルの干渉有・無の技術論争ではなく、ビジネスの主導権争いの観を呈している。
尚、現在、スペースXは、モバイルユーザー向にスターリンクBBサービスのアップグレード用に2GHz帯のスペクトルを要求中である。同周波数帯は、下左図でKu帯を争っているDish NWも使用している。スペースXは、「Dishはスペクトルライセンスを有しているものの有効に使用していない」とコメントしており、新たなスペクトル獲得戦線の拡大につながる可能性もある。
かって、米国におけるGEO衛星事業者と地上5G事業者との間に長年にわたりC帯スペクトル問題が存在した。同問題では、結果的にFCC主導のC帯クリアランス計画に伴い、衛星事業者がC帯の一部を5G事業者に明け渡す代わりにFCCから巨額の補償額を受け取り、衛星の特需にもつながった。それに対し、今回のKu帯を巡るスペースXをはじめとするLEO衛星事業者と地上5G事業者間争いがどのように決着するのか注目している。
上述のように、周波数計画によって、各社の将来の事業計画及び同方向性もある程度推測・把握可能である。従って、注目を集めるスペースXのスターリンク衛星ビジネスの今後の動向を含め、各社の動きを同観点からモニタしていくことも極めて重要と考えている。
論説-3:Artemis1打上げ延期について(村上)
Artemis計画の中核を担うSLS(Space Launch System)の打上げが8月28日朝計画されていたが、エンジンを予冷するラインの動作が正常に機能せず、打上げは延期となった。
予冷機能自体は、シャトルでも行って来ており、特段難しいことでは無いが、7月に実施したWET Testの際には、水素ラインの漏れがあり、この機能は未確認であった。
大型ロケットの様な巨大システムを構成する部品は、10万点に及びまだまだ、初期故障を除くことが出来ていない象徴と感じた。次回打上げは9月2日に目指すことであるが、確実な成功を期待している。
ロケットの開発・運用は難しい。最近順調に飛行しているSpace-XのFalcon9でさえ、2010年に打上げを開始した際は、技術的な問題を解決出来ず予定通り打上げを行うことが出来ていなかった。この頃は、米国宇宙関係者と話をするとSpace-Xは知らない。誰。そんな会社は必要ない。2~3年でどうせい消えて行く会社だろう。と言われていた。
ところが、今では年間30回以上打上げを行い、安定したシステムを作り上げるに至っている。
しかし、そのSpace-Xでさえ、Starshipの開発には苦戦しており、今年中の打上げを目指して、懸命に開発が行われている。Falcon9でかなりの経験を積んで来ているSpace-Xと言えどもこの機体の規模は従来にない規模であり、全段再使用を目指していることもあり、難度の高さは理解出来る。Elon Muskはこれが出来ないと会社が潰れるとヒステリックに発言しているのも聞くたびに厳しさを実感している。
一方で、Starshipの運用が開始され、目標とする運用が実現すると輸送系の有り方が変革してしまう。価格破壊だけでなく、利便性や能力と言った観点で、変革が起こると考えている。且つて、スペースシャトルが実現を目指した航空機の様に宇宙輸送システムを運用する時代が来る可能性がある。
今年はH3、Ariane6、SLSと言った次世代を担うロケットの初号機の打上げが多数計画されている。これらは何れも使い捨てロケットであるが、各国とも衛星の打上げには必須なシステムとなっている。これらのデビューが早期に行われ、運用が安定化することを切に願っている。
シャトルの時の様にStarshipが目標とする性能を発揮出来るかまだ何とも言えない時に使用可能なシステムを持っておくことは、国として絶対に必要なことと思っている。
且つて欧州がそうであった様に。欧州はスペースシャトルが目標としていた運用性能を実現出来ない間にAriane5により、世界の商業衛星の打上げシェアNo1となった。
WSBW2022に是非ともご参加下さい。
2022年8月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス
| 【Established Space及び他トピックス】 | 【Hybrid Space】 | 【Emerging Space】 |
【衛星】 | ■億単位のユーザーにサービス提供! 北斗3号測位システム[NO.003] ■SES 、DRSの衛星通信事業を4億5,000万ドルで買収[NO.005] ■統合の波 ライバルのSESとインテルサット合併交渉に駆立て[NO.013] ■故障したMeasat-3衛星に対する保険金請求は係争中[NO.015] ■LEO コスト急上昇の中、老朽化テレサット衛星は燃料切れ[NO.018] ■中国、グローバル量子通信NWに向け、新衛星を打ち上げ[NO.023] ■Maxar の衛星事業は防衛市場で足場を固める[NO.044] ■NASAキューブサット、デブリ懸念のためライドシェアから除外[NO.045] ■中国、リモセンなど衛星16基の同時打ち上げに成功[NO.047] ■太陽活動の増加は、小型衛星に新たな課題をもたらす[NO.048] ■L3HarrisはSDAとのトランシェ1トラッキングレイヤー契約においてMaxarに14機の衛星の設計+生産を発注[NO.053] ■宇宙軍はすべての軍事衛星を制御[NO.070] ■ユーテルサットのソフトウェア定義衛星が商用サービスに入る[NO.071] ■BallとSeagate、衛星向データ記憶デバイスを開発・試験[NO.073] ■世界初の「リモセン+健康」専用衛星、来年打ち上げへ[NO.081] ■インテルサットは、Galaxy 15衛星の制御回復に取り組み[NO.085] ■産業界は、商業衛星が戦争の標的になる現実に直面要[NO.087] ■機内コネクティビティ市場 今後10年間で倍増(ECレポート) [NO.089] | ■ロッキードがXonaのGPS代替コンステに投資[NO.011] ■SDA、宇宙・航空機間レーザー通信に新たな一石[NO.017] ■FCC、より多くのKu帯を非GEO事業者に開放検討[NO.019] ■SpaceLinkと米陸軍 中継コンステ使用研究[NO.031](図-4) ■Terran Orbital、SDA小型衛星作業を優先[NO.035] ■DARPA向く次世代光通信端末をMynaricが開発[NO.054] ■IntelsatとOneWeb、多軌道IFコネクティビティ提供[NO.055] ■米陸軍はBlackSkyの次世代画像衛星の主要顧客[NO.057] ■SpaceXは、空軍から欧州及びアフリカにおけるStarlinkサービス契約($1.9M)獲得[NO.065] ■SpaceLinkはParsonsとDARPAの衛星間通信プロジェクトで提携 [NO.086] ■米陸軍、HawkEye 360 データテスト契約署名[NO.093] ■SpaceXとT-Mobileが携帯電話への直接衛星サービスで提携[NO.097] | ■AST SpaceMobile携帯電話への直接接続を可能技術[NO.007] ■Spire が韓国の Hancom 向に 2 番目の光PLをホスト[NO.014] ■Sidus Space、LizzieSatコンステ向にAWS選定[NO.020](図-8) ■Capella SpaceのSAR 画像が Orbit Logic の SpyMeSat アプリに追加された[NO.022](図-9) ■Descartes Labsの支配権が南極キャピタルに買収される[NO.025] ■Blue CTは過去最大の小型衛星コンステ製造契約受領[NO.039] ■NanoAvionicsは、より重い小型衛星市場に拡大[NO.042] ■Capellaは、新生代のレーダ衛星を発表[NO.043](図-10) ■Orbital Insight+ASTERRAの連携によるインフラ監視[NO.046] ■SpaceX は農村部のBB補助金9億ドルを獲得できず[NO.051] ■AccelerComm 5G衛星向LEOphy layer 1モデム発売[NO.066] ■AST SpaceMobile、商用デビュー半年遅延[NO.074](図-11) ■ウクライナ、Iceyeの画像とデータへのアクセスを強化[NO.079] ■SmartとOmnispace、宇宙ベース5G技術の可能性探求[NO.088] ■メガコンステスタートアップE-Spaceは、リーダーチーム拡大[NO.091] ■Ursa Space と Spire Global は、違法な海洋活動の検出に向けパートナーシップ[NO.092] |
【打上】 | ■中国が打ち上げたロケットコアステージは海上へ落下か[NO.004] ■中国が繰り返し使用可能な宇宙船の打ち上げに成功[NO.021] ■インドのSSLVロケットは、初打上げ失敗[NO.024](図-1) ■欧州宇宙開発 ウクライナ侵攻で日本のH3ロケットに期待[NO.061] ■ESA、スペースXのロケット利用検討 ソユーズ代替で[NO.062] ■NASA新型ロケット「SLS」初号機が射点に到着![NO.078] ■国防総省が小型衛星に移行につれ、ライドシェア問題浮上[NO.082] ■NASA新型ロケット「SLS」8月29日の打ち上げは中止[NO.102] | ■Northrop Grumman と Firefly がAntaresアップグレード版で提携[NO.029](図-5) ■小型ロケット産業の成長が鈍化[NO.049] ■米宇宙軍、「Falcon Heavy」にブースターの再利用を許可–偵察衛星打ち上げに向け[NO.060] | ■SpaceXは、ライドシェアミッションに強い需要を見ている[NO.036] ■ケレス1号3回連続成功 中国民間ロケットの記録更新[NO.040] ■Virgin Orbit 打上予測を引下げ、打上毎収益増加[NO.063] |
【その他】 | ■韓国初の月面周回機は月に向かって飛行中[NO.016] ■Aerospace、低コスト光地上ネットワーク開発[NO.034](図-2) ■TelespazioとInmarsatは、月経済の将来の発展を計画[NO.038] ■FCC、新たな宇宙能力に関する新たなルールを検討[NO.050] ■カナダのMDAは英国の拡大に目を向ける[NO.052] ■陸軍、宇宙技術を不正規戦に使用する新方法を検討中[NO.056] ■規制の慈悲を求めて:コンステ展開の期限を延長するケース [NO.072] ■IntellianとSpeedcast、複数年SATCOM技術協力締結[NO.080] ■NASA有人月面探査計画「アルテミス」着陸候補地発表[NO.084] ■中国 火星の重力をシミュレート アジア初の宇宙分野「フリーフォール」鉄骨構造が竣工[NO.090](図-3) ■中国、準軌道宇宙ビークルの再利用飛行実験に成功[NO.096] | ■NASA 、関連企業は商業宇宙ステーションの開発スケジュールに関する懸念を否認[NO.006](図-6) ■宇宙軍は、将来の国防総省の宇宙投資の計画においてより大きな役割を担う[NO.009](図-7) | ■CAPSTONEは低コストの惑星間小型衛星を実証[NO.030] ■Atlas Space Operationsがユーザー・インターフェースをアップグレードし、スケジュール設定を容易に[NO.037] ■D-Orbitは、SPACの合併計画をキャンセル[NO.064] ■Turion Spaceは、商用 SSA データ販売ライセンス取得[NO.100] ■Orbit Fab、軌道上ヒドラジン補給サービス発表[NO.103](図)-12 |
【国内】 | ■JAXA、衛星EOコンソーシアム来月設立 [NO.001] ■政府、経済安保重要技術育成 海洋や宇宙など4分野 [NO.026] ■三菱重工がH-2Aロケット47号機を公開[NO.027] ■イプシロン6号機 10月7日に衛星打ち上げ [NO.028] ■パスコ、森林境界測量省力化 可搬機器で座標[NO.083] ■日本の小型探査機「おもてなし」と「エクレウス」NASA新型ロケットに相乗りして間もなく打ち上げ[NO.099](図-13) | ■JAXAと日立造船、全固体電池の充放電成功[NO.058] ■宇宙旅行の保険開発へ JAXAと三井住友海上[NO.076] ■スカパーJSATは、2024年の衛星打上げにSpaceXのStarship選定[NO.077] | ■福島県、航空宇宙産業育成 仏商談会出展費助成[NO.002] ■新ロケット発射場施工者選定 日本工営など【大樹】[NO.008] ■GITAIの10mのロボットアームは、宇宙の概念実証デモ(TRL 3)を完了[NO.032](図-14) ■シンスペクティブ、SAR衛星「実証商用機」 来月ち上げ[NO.067] ■北海道スペースポート 小型人工衛星用ロケット発射場LC-1建設等 地鎮祭・着工セレモニーを9月7日に開催 [NO.068] ■Synspective、SARデータ解析による変化予測+災害前地盤変動の「斜面不安定検知機能」を開発[NO.094] |