海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース
2024年01月30日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク
月面プロジェクトについて(村上)
JAXA月面探査機「SLIM」は姿勢こそ計画通りではないものの予定した地点に無事着陸出来、通信も出来、観測も行うことが可能となった。月の起源に繋がるデータの取得が出来ることを期待している。当初、JAXAは60点と述べていたが、90点程度まで得点をアップ出来たのではと喜んでいる。
何より、1機のスラスターが作動していない状態でも月に衝突することなく着陸出来たのは流石JAXAと思っている。また、これ以外はシステムとして大きな問題もなくミッションを達成できたのは関係者の努力によるところが大きいと感じている。
一方でこれに先立ち、1月初め米国ではAstroboticsがNASAの契約で月面輸送機を打上げたものの推進系の漏洩で地球周回軌道でミッションを断念せざるを得なかった。推進系の漏洩は打上げ直後に発生しており、月面に向けて十分な試験を行って来たのに何故この様な事態となったのか不思議に感じている。
Astroboticsの着陸機の打上げに使われたのは、United Launch AllianceのVulcanロケットであった。Vulcanロケットは打上げに成功しており、Space-Xに代わる手段として待ちに待ったデビューを飾ることが出来た。
しかし、ここに至るには計画は遅れに遅れてデビューは5年以上遅れた。
これらの事象を見ていて感じているのは、レベルの維持向上は難しいと言う点である。宇宙開発は継続して開発機会を得ることが出来ないと技術レベルは低下すると言われている。
Astroboticsの不具合はAIやIoTのハイテク技術に由来しているのではなく、アナログ的な基本的が技術に原因がある。宇宙開発はシステム工学で通信、電力、構造、推進系等の技術を組合わせて実現出来ている。カメラやその画像を分析する技術も勿論必要であるし、AIにより高度なミッションを目指すことも必要である。
しかし、ロケットの開発遅れやAstroboticsの推進系の不具合を見ていると基本的な技術の維持と向上が確実なミッション達成には必要であることを再認識させられる。
月面計画はまだ始まったばかりであり、これから幾多の困難が待ち受けていると感じている。
我が国の民間月開発企業ispaceは、昨年月面への着陸に挑戦したもの残念ながら最後のフェーズで着陸に失敗した。今年、再度挑戦すると聞いている。
政府ミッションでこの様に高頻度に打上げを行うことは難しい。民間企業だから素早く対応出来ると感じている。我が国は米国と比べて宇宙の予算が10分の1であり、人材は限られている。政府と民間が連携してミッションの達成率を上げて行く努力が必要ではと感じている。開発や運用の機会を多数得ることは技術者の成長に取って欠かせない。
Space-Xも今でこそ世界の宇宙リーディング企業となったが、当初はNASAの支援があり技術や仕事のやり方も整備を進めた。
政府が民間を支え、互いに切磋琢磨して、基本的な技術を含めて、維持向上させて行く取組と開発機会をどの様に効率良く作って行くか必要性を強く感じている。
現在、内閣府では技術ロードマップの議論が進められている。これらの事象も参考に作成されることを期待している。
Euroconsult主催イベントWSBW及びSDSSのご紹介
WSBWは、今年からWorld Satellite Business Week
- World Space Business Weekにブランド名を進化。
- 宇宙ビジネス関連各社(衛星事業者、衛星製造会社、打上げ事業者、金融業者など)のトップクラスの方々が集まるコンファレンス。
- 宇宙関連のより広範なトピックスをカバー。開催日/場所:2024年9月16日-20日/パリ
《昨年開催のWSBW2023の主要指標》
今年、フランスの防衛・軍事団体と提携して、宇宙防衛・安全保障サミット(SDSS)を2024年9月17日-18日/パリにて初開催。
- 防衛、安全保障、宇宙産業におけるグローバル・リーダーが一堂に会する重要なイベント(WSBWとの相乗効果の実現)。
追記:5月30日(Single Day Event)にシンガポールで開催予定のASBWについては、近々に別途ご案内予定です。
2024年1月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス
【Established Space及び他トピックス】 | 【Hybrid Space】 | 【Emerging Space】 | |
【衛星】 | ■宇宙軍、衛星給油計画の可能性をウォーゲームで検証[NO.008] ■LM、衛星の運用開始前のキャリブレーションを迅速化する技術を発表 [NO.013](図-1) ■中国、アインシュタインプローブ衛星を打ち上げ[NO.023] ■Jupiter-3、商用サービス開始[NO.027](図-2) ■北斗ベース時間周波数校正・測量能力の国際相互認証[NO.031] ■SDA、戦場での迅速なターゲティングを可能にするカスタムペイロードを搭載した衛星を調達へ[NO.035] ■SDA、ミサイル追跡衛星に25億ドル相当の契約を締結[NO.036] ■「天目1号」気象衛星群が段階的なネットワーク構築完了[NO.037] ■業界レポート、衛星データから未開発の価値を引き出すためにAIの利用拡大を求める[NO.049] ■中国のハイパースペクトル総合観測衛星が運用開始[NO.063] ■米宇宙軍、拡大する中国のスパイ衛星群を警戒[NO.078] | ■NGA、「Luno」プログラムで商業衛星データを利用へ[NO.024] ■欧州、ソブリン・ブロードバンド案の最終決定まであと数週間[NO.057](図-4) ■ユーテルサットのグローバルLEOブロードバンド・サービスを阻む地上の遅れ[NO.071] ■エアバス、スペース・コーストのコンステレーション工場を買収[NO.072] | ■SpaceX社、Ovzon社のブロードバンド衛星を打ち上げ[NO.005] ■John Deere+SpaceX、農家のための農村接続を拡大[NO.038] ■Kinéis、IoTコンステレーションを展開へ[NO.039] ■グーグルとAT&T、ASTスペースモバイル投資参加[NO.046](図-10) ■Pixxel社、6月に6基の自製ハイパースペクトル衛星「Fireflies」を打ち上げ[NO.052] ■Albedoは、商用VLEOコンステ向に $35Mを調達 [NO.060] |
【打上】 | ■宇宙軍、老朽化打上げインフラのデジタルオーバーホール[NO.009] ■中国、再使用ロケット「朱雀3号」初の大型垂直打ち上げ・着陸飛行試験が完了[NO.048] ■海南商業宇宙発射センター、6月中に常態化した高頻度の打ち上げ能力を形成へ[NO.055] ■ESAとEU、打上げイニシアチブで協力[NO.058] | ■スペースXの「ファルコン・ヘビー」打ち上げ成功 米軍のスペースプレーン「X-37B」を搭載[NO.014](図-5) ■宇宙軍、「デジタル・スペースポート」の複数の契約をそれぞれ最高190万ドルで締結[NO.025](図-6) ■ファイアフライ・エアロスペース社、アルファ・ロケットによる打ち上げプロバイダーとして国家偵察局に選定される[NO.074] | ■ファイアフライ、「アルファ」ロケットで衛星を打ち上げも予定外の軌道へ投入 第2段エンジンの異常か[NO.002] ■SpaceX、2024年最初の打ち上げでスマートフォン直収衛星を配備[NO.003] ■インド、通信衛星打上げにFalcon 9を選定[NO.004] ■SpaceX社、推進剤のガス抜きが2隻目のスターシップの損失を招いたと発表[NO.028] ■ロケットラボ、Spire + NorthStar向のSSAミッションを打上げへ[NO.033] ■Redwire、Blue Ringトランスファー・ビークルにコンポ提供[NO.050] |
【その他】 | ■中国の宇宙開発市場が爆発的成長 3万社超が参入[NO.006] ■宇宙軍、待望の商業宇宙戦略を最終決定へ[NO.010] ■UAE、月面Gateway向エアロックを製造[NO.015](図-3) ■Kratos+Rancher Government Solutions、OpenSpace® ソフトウェアプラットフォームを使用戦略的パートナーシップ発表[NO.016] ■米陸軍、地上戦向宇宙利用に関する新ガイダンスを発表[NO.017] ■NASA、「アルテミス計画」月面着陸延期 [NO.021] ■米国防総省は宇宙分野における秘区分を減らし、同盟国や民間パートナーとの協力関係の強化を模索[NO.041] ■月宇宙インフラへの国防総省投資を求める新報告書[NO.043] ■宇宙商務省、民間宇宙交通調整システムの商用パスファインダー・プロジェクトを開始[NO.045] ■Guetlein、“即応宇宙 “での文化改革を求める[NO.047] ■先進的な未来の軍事用レーザーが英国で初めて実現[NO.051] ■欧州が宇宙資金タスクフォースを設置[NO.061] ■EU宇宙法提案、3月に提出予定[NO.062] ■FCC、軌道デブリ低減規則を再確認[NO.066] ■北京市、商業宇宙飛行の革新的発展の加速行動案発表[NO.067] ■ノースロップグラマン軌道上給油ポートが米軍事衛星に選定[NO.073] | ■NASA、ブルー・オリジンとボイジャー・スペースの商業宇宙ステーション契約に資金を追加 [NO.011](図-7) ■宇宙軍、複合現実感訓練でマイクロソフトと契約 [NO.019](図-8) ■Muon Space、宇宙からのクラウド特性評価で空軍に採用される[NO.020](図-9) ■Boryung Corporation + Axiom Space、韓国の宇宙産業に革命を起こすJVを発表[NO.034] ■スペースX効果で宇宙ビジネス活況、関連企業の利益と株価押し上げ[NO.054] ■人工衛星を移動、宇宙版「けん引トラック」開発中[NO.076] | ■米民間月着陸船ペレグリン、打ち上げ後に異常発生[NO.018] ■Astroboticのペレグリン、”月面軟着陸の可能性ゼロ “に失望 [NO.022] ■地球再突入軌道に乗った月着陸船ペレグリン[NO.029] ■オービット・ファブとクリアスペース社、宇宙燃料補給サービスを開発へ[NO.059] |
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