海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2023年12月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:大石 強
発行責任者:村上 淳

2024年を迎えるにあたって(村上)

2024年を迎えるにあたって12月の振り返りについて幾つかの点について整理して見た。

先ずは、我が国の2024年度予算(案)の特徴を整理して見た。
令和5年は基本計画の改訂があり、4本柱が規定され、その方針に基づいて予算(案)が編成されている。

1本目の柱である宇宙安全保障の確保については、宇宙領域把握(SDA)衛星や衛星コンステレーションの構築が挙げられている。
これに海洋状況把握の能力向上が追加された。防衛関係の予算の増額が行われており、宇宙の安全保障の重要性が色濃く出ていると考える。

2本目柱である国土強靭化・地球規模の課題への対応については、昨年度からの継続でリモートセンシング画像の利用拡大が取り上げられている。

3本目柱である宇宙科学・探査については、大きな柱であるアルテミス計画の推進とHTV-Xの開発が掲げられている。
アルテミス計画については米国でも予算の拡充・推進が図られている。米国と比べて規模は小さいが与圧ローバーは米国の期待が大きく確実な開発を期待している。

4本目の柱である総合基盤の強化については、H3の確実な打上げとイプシロンロケット実証機の打上げが掲げられている。
昨年は輸送系で思わぬ停滞があったが今年は新たな出発の年となる様に期待している。そして、今年度からの特徴として宇宙戦略基金の創設が大きな動きとして見られている。今後、10年間で1兆円規模の基金を設けて産業競争力の強化を行うことが掲げられた。現在、JAXA予算は補正予算を含めて2,000億円程度であり、単純計算で行くと1,000億円程度がこれに上乗せされることになり、従来と比べて格段に予算が拡充されることになる。これらの資金は、2023年度に制定される「宇宙技術戦略」に基づいて資金が活用される計画であり、諸外国との競争で後れを取っている我が国の宇宙産業に取ってキャッチアップの好機となることを期待している。

12月には米国でも動きが見られた。

バイデン政権となって3回目となるNational Space Councilが開催された。今回の大きなテーマは国際協力の推進であり、アルテミス計画における協力の推進や衛星破壊実験の禁止を推進することが謳われた。国際協力の重要性が述べられた一方で具体化については話がなく少し肩透かしを食った形となった。

一方で、米国の宇宙産業競争力の強化と中国、ロシアに対する宇宙インフラの危機については強い懸念を持っていることが示された。特に宇宙システムに対するサイバーセキュリティ対策は早期に対策を取る必要があることが示された。

また、宇宙産業の競争力の向上については、商業化が推進される現在の状況下で、商務省、運輸省の責任分担とそれ以外の認可の在り方について議論が進められることになった。
従来は、開発はNASAや国が行って来たのに対して、Space-Xが独自のシステムを開発し、それをNASAが調達する等、従来の枠組みでは対応出来ない事象が起こっているのと、過度に規制することばかりだと米国の宇宙産業の競争力を落とすことになりかねないとの意見が産業界を中心に起こっており、これに対する対応を検討し始めている。 ホワイトハウスは商務省と運輸省との連携により対応して行く案を示しているが、これでは余り効果が期待できないのではとの意見が各方面から出ている。規制と産業振興をどの様にバランスを取って効果的に進めて行けるか検討が進められる見込みである。

空軍については、米国の優位性が崩れるのではとの危機が強く、民間の機能を使いつつ、効率的で強固なシステムをどの様に作って行くか議論が進んでいる。米軍は内部で官僚的な組織や調達システムの早期の改善が必要との意見が出ている。内部からこの様な意見が出て来ることはある意味健全な組織であると言えるのかも知れない。

今回は、日米の動向について整理して見ました。マンスリーニュースの在り方について皆様の意見を伺いつつ改善して行きたいと思っています。
引き続き宜しくお願い致します。


2023年12月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【Established Space及び他トピックス】【Hybrid Space】【Emerging Space】
【衛星】■インテルサット、アメリカン航空機にマルチ軌道Wi-Fiを導入 [NO.005]
■専門家、GPS近代化への米国のコミットメントに懸念を表明[NO.026]
■宇宙軍、軌道を調整し脅威に対応する新型衛星に注目[NO.041]
■WRC-23、衛星出力制限見直しで厳しい妥協点[NO.042]
■WRC-23以降も続く等価電力束密度制限値争い[NO.044](図-1)
■中国、大型機密光学衛星を静止軌道に向けて打ち上げ[NO.047]
■宇宙軍初のミサイル防衛衛星6基、中軌道に投入 [NO.053]
■深宇宙光通信超高解像度ビデオストリーミング成功[NO.059](図-2)
■中国、北斗測位衛星2基を打ち上げ[NO.078]
■中国、再利用型宇宙船打ち上げ ミッションは謎に包まれる[NO.079]
■中国のG60メガコンステレーション用衛星1号機が組立ラインからロールオフ[NO.083]
■スペイン防衛大手、Hispasat株式取得を目指すとの報道[NO.084]
■インテルサット、マルチ軌道アンテナでスペースX社との提携を強化[NO.009]
■NRO、電気光学画像商業サプライヤーと契約締結[NO.016]
■HawkEye 360 MaxarのRFソリューション買収[NO.049]
■Ovzon、スウェーデン宇宙公社(SSC)からSATCOM-as-a-Serviceを受注[NO.051]
■Tata Advanced Systems + Satellogic、インドでLEO衛星を製造する戦略的契約を締結[NO.062]
■ロケットラボ、米政府機関向けに18基の衛星を製造する5億1500万ドルの契約を獲得[NO.067](図-3)
■Amini、アフリカに特化の環境コンステに400万ドル調達[NO.003]
■豪の新興企業、デュアルヘッドの宇宙カメラを開発 [NO.006](図-6)
■SatixFy、証券取引所から上場廃止の警告を受ける [NO.013]
■ガーナ、スターリンクの違法サービスに警告[NO.025]
■ニュージーランド航空、機内Wi-Fiにスターリンク試験導入  [NO.033] ](図-7)
■True Anomaly、セキュリティ技術の投資拡大資金調達[NO.034]
■FCC、スターリンクの地方ブロードバンド補助金却下支持[NO.039]
■Kuiperのプロトタイプが衛星間光リンクのテストに成功[NO.045]
■Lynk Global、ダイレクト・ツー・スマートフォン衛星の資金調達のため株式公開を計画[NO.052]
■Slam Corp、Lynk Global合併案を前に1億7600万ドルの損失[NO.081]
【打上】■中国、「エジプト支援2号」衛星の打ち上げに成功[NO.017]
■SaxaVord・スペースポートが英国のライセンスを取得[NO.050]
■中国、海上から衛星3機の打ち上げに成功[NO.075]
■アマゾン、カイパー打ち上げキャンペーンにファルコン9を追加[NO.004]
■トランスポーター展開の不具合で3基の衛星喪失推定[NO.023]
■中国ランドスペース社、3機目のメタンZhuque-2を打ち上げ、2025年の新型ステンレス製ロケット打上げを目指す[NO.024]
■ロケットラボ、韓国の人工衛星を打ち上げ予定[NO.027]
■Electron、日本のレーダー画像衛星の打ち上げ成功でフライトに復帰[NO.048]
■New Shepard、サブオービタル・ミッションを成功させ飛行に復帰 [NO.055] ](図-8)
■中国の打ち上げ新興企業ギャラクティック・エナジー社、再使用型ロケットPallas-1向けの1億5400万ドルを調達[NO.058]
■ファイアフライ・アルファ上段の故障でペイロードが誤った軌道に投入[NO.068]
【その他】■アンゴラ、アルテミス協定に署名[NO.008]
■宇宙開発優先の2024年国防権限法案を議員が発表[NO.021]
■エアバス、最初のHAPSドローンハブにケニアを選定[NO.029]
■Wallonia、宇宙産業振興のため欧州の投資部門を導入[NO.054]
■ホワイトハウスがミッション認可政策の枠組みを発表[NO.057]
■Bayanat + Yahsat 取締役会、AIを活用した宇宙技術創出のため合併を推奨[NO.065]
■豪宇宙庁、「月の土」採取ロボの開発加速[NO.070]
■DARPA、月面アーキテクチャ研究に14社を選定[NO.022]
■Firefly Aerospace、軌道上宇宙船ハブのフレームワークでDARPA LunA-10を支援[NO.028](図-4)
■オーストラリアの宇宙新興企業クエーサー、米国の防衛市場を狙う[NO.043]
■フランス、デンバーとヒューストンにニュースペース・ハブを設立へ[NO.063](図-5)
■Orbit Fab社と豪Space Machinesが軌道上サービスで協力 [NO.018](図-9)
■Rogue Space、初の軌道上サービス契約を獲得[NO.032]
■Lunasonde、軌道上からの地下鉱物検出をテスト[NO.040]
■Axiom Space、世界初の軌道上データセンターでKepler Space及びSkyloomと提携[NO.064]
■NorthStar Earth & Space、商業宇宙ベースのSSAでクラス初[NO.082]
【国内】■NEC、航空宇宙・防衛事業に200億円投資 新棟建設 [NO.001]
■スカパーJSATなど5社、内航コンテナ船を遠隔管理[NO.002]
■日本、宇宙安保枠組みに初参加 情報共有へ連携強化[NO.010]
■国土地理院・JAXA、IGSの解析センターに認定[NO.011]
■過熱する「制宙権」争い=日本、脅威への対処加速[NO.012]
■防衛省・自衛隊、宇宙安保の多国間議論に参加[NO.014]
■ 「イプシロンS」燃焼試験中の爆発 点火装置の金属部分の溶解・飛散による断熱材の損傷が原因と特定[NO.031]
■スカパーJSAT、企業向けスターリンク提供開始[NO.060]
■日本人宇宙飛行士が近く月面へ…NASA正式締結方向[NO.066]
■中国やロシアの「キラー衛星」に対抗、自衛隊の通信衛星で宇宙監視…30年代打ち上げ[NO.069](図-10)
■JAXAの月探査機「SLIM」月周回軌道投入成功[NO.074](図-11)
■H3ロケット2月打ち上げ 国産2号機、失敗から1年[NO.077]
■日揮HD、JAXAの月面プラントの概念検討に採択[NO.035]■活版印刷の版、無事打ち上げ成功 [NO.007]
■月面プラントと遠隔通信 日揮・横河、共同開発[NO.015]
■佐賀大、ダイヤモンド半導体デバイス 宇宙通信向[NO.020]
■Orbit Fabとispace、月推進剤で協力[NO.030](図-12)
■大阪公立大等、トランジスタ放熱2倍 ダイヤ基板[NO.036]
■大林組など、衛星通信とドローンで建設監理減[NO.037]
■宇宙ベンチャー 全国初、東証グロースに上場[NO.038]
■岐阜大、宇宙研究利用推進拠点の開所式開く[NO.046]
■水推進機 東京計器とPale Blue協業[NO.056](図-13)
■ソフトバンク株式会社、HAPS用アンテナの最大通信エリアテストに成功[NO.061]
■ヤマトHD、小型衛星に出資[NO.071]
■日本郵船、スターリンク導入船拡大 [NO.072]
■アクセルスペース、最短1年での開発可能な実証衛星「PYXIS」公開[NO.073](図-14)
■アクセルスペース、地球観測やその他の小型衛星向けに4400万ドルを調達[NO.080]