海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2023年8月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:大石 強
発行責任者:村上 淳

Small Satellite Conference 参加報告(村上)

米国ユタ大学(ローガン)にて8月5~10日Small Satellite Conferenceが開催された。
参加者は3,700名で日本からも100名以上がコンファレンスに参加した。本コンファレンスは、37回目を数え、規模も小型衛星の利用の拡大と共に拡大の傾向を辿って来ている。
サテライト・ビジネス・ネットワークは、オンラインで参加したので概況を報告する。
今年のテーマは、「Mission at Scale」(大規模ミッション)。小型衛星のコンファレンスでここまで来たかと印象を持たされるテーマと内容となって来ていた。

驚くのは、小型衛星の新興企業だけでなく、大手企業もこの機会に講演したり、プレスリリースを行っている点である。米宇宙軍が小型衛星の計画を推進しており、このことにより小型衛星の認知度は数段に上がり、技術開発も進んでキーインフラにも小型衛星が使われる様になって来ていることがこの背景にあると考える。
勿論、Euroconsultが9月に開催しているWSBW(World Satellite Business Week)や3月に開催されているSatelliteとは性格を異にしており、大学が主体で行う誰でも参加出来る敷居の低いコンファレンスであるのは事実である。

注目する発表では、Space-XがStarlinkの衛星ソフトウェアの軌道上での変更について報告していた点である。3,000機以上を運用している状況で、運用はどの様に行っているのかこれまで殆ど知られていなかったが、今回はソフトの書き換えを自動でインターネット通信の様な方法で実施しているとの報告があった。テスラは既に地上で数百万台の車に対してソフトの書き換えや自動運転技術も行って来ている訳でこの延長線上で言えば驚くに足らないことなのかも知れない。 
また、Space-Xは打上げサービスでも従来の太陽同期軌道への纏め打上げから、傾斜軌道への打上げサービスへも乗り出すとの報告もあった。45°の軌道傾斜角に1年に2回打上げを行う計画である。また、従来打上げプロバイダーに委託していたサービスプロバイダー業務を自社のインターネットを活用することにより可能にして行くとのことである。打上げプロバイダーに委託すれば衛星オペレータや衛星メーカにとっては手間が省ける反面、手数料を支払う必要があり、価格は上がってしまうことになる。
Space-Xがインテグレーションしてくれれば、手間を掛けずの手数料を払うこともないので魅力的と感じると思われる。

Lockheed Martinは、米宇宙軍への対応の為、小型衛星の組立施設をデンバー郊外に開設したとの報告があった。カリフォルニアからコロラドに工場を移設しており、大型衛星用の組立・試験設備は整備済であった。小型衛星は価格が安いことからライン化して、省力化を図らないと利益を出すのが難しい。今回の対応はその一環であり競争力を意識した対応とのことである。

新興企業では、Terran Orbitが従来のラインアップに加えて800kgまで製品群に加えるとの報告があった。小型衛星しか出来ない企業ではなく、製品群の充実が大切であることを認識した。RocketLabはBlackskyから5機の打上げを受注した。コンファレンス終了後であったがQPS研究所もRocketLabと契約を行ったとの発表があった。
MITが地上との光通信試験の状況報告やDLRの報告もあり、革新的な技術をオープンな場で発表し、競い合っていることを改めて認識した。

オンラインでの参加は適宜アクセスして情報収集出来るので他の業務を行いながら出来る点で良かったと考えている。また、Euroconsultからは北米から2名参加しており、レポートが逐次入って来るので現地参加と同じ様に情報収集が出来た。

ただ、ステーキやビールが無い点はちょっと物足りない感じを持たざるを得なかった。


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2023年8月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【Established Space及び他トピックス】【Hybrid Space】【Emerging Space】
【衛星】■LM、小型衛星に特化した新工場を開設 [NO.013](図-1)
■ユーテルサットとタイコム、アジア向け通信衛星で提携[NO.015]
■中国が2つ目のブロードバンド・メガコンステを計画の可能性[NO.021]
■ViaSat社、インマルサット社のLバンドをデバイス直収サービス用に研究中[NO.030]
■ViasatはViasat-3 Americasの全損を宣言する準備ができていない[NO.032]
■Telesat初期LEOコンステレは、メーカー切替後全額出資[NO.034]
■インテルサット、37億ドルのCバンド清算金支払いの条件を満たす[NO.038]
■BAEシステムズ社、ボール・エアロスペースを55億ドルで買収[NO.045]
■パナソニック アビオニクスがGEO接続の拡張を発表[NO.056]
■宇宙開発庁、ロッキード・マーティンとノースロップ・グラマンに衛星72基の契約を発注[NO.057]
■北朝鮮、「衛星ロケット」打ち上げ失敗を発表…「10月に3回目発射」[NO.064]
■Viasat、インマルサット衛星の不具合を報告[NO.068]
■インマルサット6号F2の不具合についてViasatが情報を提供[NO.075]
■宇宙開発庁のデータトランスポート衛星が複雑化[NO.080]
■アップル傘下のグローバルスター、収益急増でIoTの好機が浮き彫りに[NO.012]
■Viasat Real-Time Earthは、日本に地上局オープン[NO.041](図-3)
■宇宙開発庁、NW増強向商業LEOオプション検討へ[NO.046]
■EutelsatとOneWebの合併は株主投票待ち [NO.058]
■Umbra社、宇宙ベースレーダー実証実験に選ばれる[NO.059]
■Mynaric、米軍コンステン用光地上端末を設計[NO.060]
■Momentus、低価格バスM-1000にスポットライト[NO.011]
■LeoStella社、SDA契約をターゲットとした同社最大の小型衛星を発表[NO.014] ](図-6)
■Redwire社、True Anomaly衛星にカメラ供給[NO.020](図-7)
■Vyoma、デブリ監視コンステ向パイロット衛星発注[NO.027](図-8)
■Umbra Space社、最高解像度の商業衛星画像を公開[NO.029]
■Momentus、戦略的選択肢を評価しながら人員削減[NO.042]
 ■Terran Orbital社、Rivada Space社から今年中に1億8000万ドルの支払いを受ける見込み[NO.043]
■スペースXの業績判明、1-3月期は黒字転換 大幅増収で[NO.044]
■True Anomaly、コロラドに製造設備をオープン[NO.047]
■SkyWatch、レーダーと光学衛星の統合画像を提供へ [NO.048]
■Astranis、ユーティリティサットGEO衛星を発表 [NO.061](図-9)
■Hera SystemsとLeoStella 軍事衛星向提携 [NO.076](図-10)
【打上】■Ursa Major、 3Dプリンティング製造施設追加資金獲得[NO.009]
■BlackSkyは、5回のElectron打上げを購入[NO.025]
■SpaceX、中傾斜軌道小型衛星ライドシェアを提供へ[NO.037]
■Firefly、軍の「即応宇宙」ミッションに招集準備完了[NO.083]
【その他】■上院委員会、軌道デブリ除去法案を可決[NO.002]
■スターライナー初の有人飛行は2024年に延期[NO.016]
■ディッシュ・ネットワーク、Ku帯で双方向固定ブロードバンド・サービスを計画[NO.024]
■KSATのKa帯ネットワークが拡張され、小型衛星コンステレーションに最適化された[NO.026]
■DISH NetworkとEchoStarが合併[NO.033]
■中国で宇宙企業433社に急増、「軍民融合」で新ロケット技術…軍事利用拡大懸念も[NO.036]
■DARPA 、月の統合インフラを研究[NO.039]
■ノキアの月面4Gネットワークの試験的構築ミッション、打ち上げは2023年11月以降の3か月以内に実施予定[NO.050]
■ロシアの月探査機Luna-25、月面に衝突[NO.054]
■中国の国家宇宙実験室が正式に稼働[NO.055]
■インド月探査機チャンドラヤーン3号 月面着陸成功NO.062](図-2)
■衛星アプリケーション・カタパルト、軌道上製造アクセラレータにイノベーターを迎え入れる[NO.074]
■ボイジャー・スペース社とエアバス社、商業宇宙ステーションの合弁会社を設立[NO.006](図-4)
■米情報機関、スペースデブリ追跡プロジェクトのベンダーを選定[NO.009]
■NRO、FireflyとXtentiにて、即応型宇宙開発実施[NO.019]
■Crew-7、宇宙ステーションとドッキング[NO.067]
■TransAstra、NASAのデブリ捕獲バッグ契約を獲得[NO.081](図-5)
■DCubed、宇宙空間での製造デモを公開 [NO.023]
■ヴァージン・ギャラクティックが2回目の商業宇宙飛行に成功 今後は毎月実施予定[NO.035](図-11)
■マイクロソフト、AIとデータ分析の新興企業と新たなパートナーシップを締結[NO.079]
【国内】■文科省、「イプシロンS」爆破事故の原因言及[NO.001]
■JAXA 人件費増 技術承継・ノウハウ蓄積[NO.005](図-12)
■スカパー共同衛星打上げ 日米企業宇宙協力拡大[NO.010](図-13)
■国交省、災害時の国道被害把握に観測衛星等活用検討
   [NO.040]
■近畿地方整備局、人工衛星で影響調査 [NO.053]
■JAXA、H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗の原因究明に結論 再発防止対策を実施へ[NO.066]
■三菱重工・JAXA、H2A打上中止 風条件満たさず[NO.069]
■2024概算要求/文科省、JAXAに資金供給機能 開発力向上へ制度化加速[NO.072]
■2024概算要求/政府、宇宙関連5000億円超 H3開発強
   化など[NO.082]
■「中小企業イノベーション創出推進事業費補助金」宇宙分野(民間ロケットの開発・実証)(スペースデブリ低減に必要な技術・実証)[NO.004]
■ネッツ・高橋電機製作所・JAXA、小型衛星の電気推進システム開発[NO.052]
■ファンリード、ベトナムの送電線をドローンで点検 「みちびき」活用[NO.077]
■アストロデジタル、アストロスケールの軌道上サービス用ドッキングプレートをインテグレート[NO.003](図-14)
■ワープスペースがNEDO23年度「SBIRプログラム」決定[NO.017]
■ペイルブルー、水性推進システムを供給[NO.018](図-15)
■KDDIと商船三井、船上で「スターリンク」実証 [NO.022]
■SB、次世代HAPSサブスケールモデル試験成功[NO.028]
■QPS研究所小型SAR衛星5号機の打上げに関して米国Rocket Lab(ロケット・ラボ)社と契約を締結[NO.049](図-16)
■三菱UFJ系とJTB、宇宙産業参入支援 港や仲介[NO.065]
■マクアケ、小型人工衛星事業に参入[NO.070]
■ポーラ、宇宙で使える化粧品開発 みずみずしさ保つ[NO.071]
■アクセルスペース、小型衛星の撮影画像を販売 [NO.073]
■日本の宇宙ロボット企業GITAIが1500万ドルを調達[NO.078]
■スターリンク・スマホ直接通信 KDDI、提携拡大[NO.083]