海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース
2025年11月30日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク
編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳
論説:最近の動きについて(村上)
今回は、通信業界の動向とESA閣僚会議の結果について報告させて頂きます。
宇宙の歴史は通信の歴史と言って良い程長きに渡って通信業界が宇宙産業を牽引して来ていた。
通信オペレータは大手5社(Intelsat、SES、Eutelsat、Viasat、Telesat)が市場の代表的なプレイヤーであり、これらの企業と取引を行える様になることが宇宙に携わる企業の夢となって来た。
勿論日本のスカパーJSATもそれに次ぐ勢力として検討おり、スカパーと契約することは大きな誇りとなっている。
しかし、ここに来て幾つかの大きな動きが行って来ている。
2025年7月には業界1位のSESが2位のIntelsatを買収して巨大企業が誕生した。移動体通信のInmarsatもViasatに買収された。低軌道衛星のオペレータとして脚光を浴びていたOnewebもEutelsatに買収された。この様にオペレータの数が急速に縮小して来ている。
当然、これらの企業に衛星提供して来た衛星メーカも苦境に喘いで来ており、MAXARの子会社で世界最大の商業衛星メーカのLanteris(旧Space System Loral)はIntuitive Machinesと言う探査の専門メーカに買収されることになった。欧州のAirbusとThales Aleniaも合併に向けての調整に入ることで合意した。 年間20基程度あった商業衛星の打上げは5基程度まで下がって来ている。
この様な地殻変動を引き起こして来たのは、Space―Xのスターリンクで通信業界に革命を起こして来ている。今まで概念は地上の通信網と宇宙の通信網は別ものとして扱われて来ていた。
ここに来て技術革新が進み、宇宙と地上が急速に融合し始めて来ている。その最たるものが携帯ダイレクト通信である。現状は緊急信号程度して使えないが、2-3年で音声も使える様になる見込みである。地上で周波数の割り当てがあり、各国の規制の枠の中で動いているので普及には時間を要しているものの、Space―Xは周波数の権利をどんどん買っており、気が付いたら、Space-Xに世界は制覇されかねない状況となっている。
我が国は単独で言えば地上の携帯電話網が97%普及しており、ダイレクト通信の必要性が低いのは事実であるが、世界の潮流から益々取り残されてガラパゴス化が更に進む事態は避けなければいけないと思っている。
KDDIやNTTはスターリンクのサービスを我が国で展開する権利を得て事業を行うことを考えている。しかし、これでは国内事業に展開が限られてしまうことになる。
技術立国日本と言う言葉は最早昔の話と言わないで、日本発で世界展開出来る宇宙の企業が出て来ることを切に願っている。
欧州閣僚会議が11月26、27日ブレーメンで開催され、2022年の2.9兆円(169億€)に対して3.8兆円(220億€)(2026年からの3年間)となり、32%の増額で合意した。
輸送系や地球観測は大幅増となった。一方で、探査は大幅減となった。欧州はArtemis計画だけでなく、火星サンプルリターンでも米国と緊密に連携して来ていたが、これらの計画が不透明になったことが予算に影響したことになった。今後目指すべき方向性は見えて来るかとも思うが、この様な動向に左右されることなく、探査についても地道な活動継続して行くことが必要ではと思っている。
Novaspace社レポート『Satellites to be Built and Launched(第28版)』のご紹介

- このたび、Novaspace社より、『 Satellites to be Built and Launched』第28版が発行されましたのでご紹介させて頂きます。
- 従来、本レポートをご購入頂いている顧客の方々は本レポートにて取り扱っている世界の衛星製造・打ち上げ市場に関する詳細な分析内容などにつき既にご存じ かと思いますが、今回の新版ではさらに内容を拡充しております。
- 最新の第28版では、業界を形作る最新の動向を反映するため分析を拡充・更新しました。主な内容は以下の通りです:
- 米国政権下における新たな政府優先事項と政策
- 数百件に及ぶ新規衛星・コンステレーション計画の追加
- 衛星通信市場の変革と事業者コストベンチマークの徹底分析
- 小型GEO衛星の台頭とスターシップの潜在的影響に関する洞察
- 長期計画のための20年間の将来展望シナリオの拡充
- 主な調査結果:
- 今後10年間で打ち上げられる衛星は約43,000基、製造・打ち上げ総額は6,650億ドルに上る
- 防衛分野が将来の市場価値の主要な牽引役であることが確認(2025~2034年の収益の48%を占める)
- 5つのメガコンステレーションが打ち上げの66%を占めるが、市場価値全体の11%に留まる
- 小型プラットフォームが経済性を再構築する中、GEO通信衛星需要が再び拡大
- 本レポートの詳細につきましては、下記のURL (Product Page)にてご確認頂けます。また、無料の要約版(Free Extract)もダウロード可能です。 Satellites to be Built & Launched — Product Page
- さらに本レポートにつき、ご質問及びご確認事項などがございましたら、Novaspace社日本事務所レポート担当の大石(tsuyoshi.oishi@nova.space)までご連絡ください。
2025年11月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス
| 【民間宇宙トピックス】 | 【防衛宇宙トピックス】 | 【その他】 | |
| 【衛星】 | ■ViaSat-3 F2衛星は2025年11月5日に打上げが確定(001)(図-1) ■2026年12月にTelesat社のLightspeed Pathfinderがデビュー予定(011)(図-2) ■SCEYE社は成層圏地球観測でNASA賞を受賞(017) ■AST SpaceMobile社がEU主導ダイレクト・トゥ・デバイス計画情報提供(023)(図-6) ■中国はVLEO軌道技術試験打上げで年間打ち上げ記録を更新(025) ■インパルススペース社のLEOエクスプレス3ミッションの最新情報(027)(図-8) ■中国はguowangコンステレーションを拡大029サテリオット社は高性能な Direct to Device 衛星を製造(028) ■欧州企業が2026年に商業用微小重力ミッションを飛行する予定(032) ■SES社がRelativity Space社との打上げ契約を拡大(035) ■プロジェクト・カイパーはAmazon LEOに名称変更(037) ■Infinite Orbits社とSES社が欧州初の商業寿命延長ミッションで協力(039)(図-11) ■ヒューズ社は今後12か月間の活動する資金が不足(048) ■ブルーオリジン社が国家安全保障ミッション用にブルーリング宇宙船を推進(066)(図-21) ■Infinite Orbits社とSES社が静止衛星寿命延長ミッションを提供(068) ■L3Harris社の次世代気象イメージャーはNOAAの気象データを提供(071) ■Dawn Aerospace社とCosmoserve Space社が宇宙給油技術の進展を目指す戦略的覚書締結(072) ■ブラックスカイ社は最新の第3世代衛星を軌道上に投入すると発表(075) ■SES社とRelativity Space社はテランR用MLAを拡大(079) ■Proximus Global社はStarlinkによるDirect to Cell衛星接続を拡大(080)(図-24) ■IRIDEコンステレーションにはさらに8基の小型衛星が追加される(084) ■スパイア・グローバル社は11基の衛星を打上げ(085) | ■中国がGEO yaogan 衛星を打上げ、インドは大型通信衛星を打上げ(003) ■衛星企業が防衛顧客獲得を競い合う中、Iceye社が画像サービスを発表(013) ■インド宇宙研究機関が軍の最重量通信衛星をGTO打上げ(021) ■ (図-5) ■ポータルスペースシステムズ社が高機動衛星バスを発表(026)(図-7) ■中国の宇宙野望は新たな段階に突入(053) ■宇宙軍のロードマップは軍の必要とするものとその理由を規定している(062) ■ドイツは新戦略で軍事宇宙の優先事項を説明(069)(図-22) ■大規模な防衛案件に対応できるCOMSATCOMの利用化(076) ■中国は民間宇宙事業を国家宇宙開発計画に統合する動きを推進(082) | ■ESAはERSプログラムでデュアルユースと防衛へシフトを示す(015) ■EchoStar社はSpaceX社の持分拡大と引換えに26億ドルの契約でDirect to Deviceスペクトラムを売却(020) ■ヨーロッパのハイパースペクトル地球観測のリードは官民連携(022) ■中国の宇宙シルクロードに対抗して中東における米国のパートナーシップモデル(038) ■SES社がInfinite Orbits社契約でGEOの最も多忙なサービスパイプラインに加わる(041) ■OHB社は欧州の宇宙共同事業計画に懸念を表明(044) ■宇宙空間での太陽電池アレイ製造の実証のために(049) ■次世代のレーダーはより安全なLEOを実現に必要(051) ■レッドワイヤー社は4400万ドルのDARPA助成金を獲得し、空気吸入型衛星の開発に携わる(055)(図-16) |
| 【打上】 | ■ロケットラボ社が6基目のiQPS衛星を打上げ(018)(図-19) ■ブルーオリジン社がFAAの商業打上げ制限命令からの免除を求める(024) ■ロケットラボ社初のニュートロン打上げを2026年に延期(031)(図-9) ■ニューグレンでNASAの火星ミッションESCAPADEが打上げられブースターの着陸成功(034)(図-10) ■ヴァージン・ギャラクティック社は2026年に商業便開始を予定(040) ■ブルーオリジン社は来年初めに次のニューグレン打上げを計画(042)(図-12) ■ドリームチェイサーの初飛行前の重要な試験を完了(043)(図-13) ■2つの調整がアリアン6とベガCの活用における新たな一歩を示す(045)(図-14) ■カタリスト社はペガサスをスウィフト・リブーストミッションの打上げに選定(056) ■イサー・エアロスペース社はSEOPS社と個別ミッションの打上げ契約を締結(058) ■エレクトロン社が機密商業衛星を打上げ(060) ■ブルーオリジン社がニューグレンのアップグレード計画を発表(061)(図-17) | ■ファイアフライ社はサイテック社買収完了後防衛市場への進出を深める(036) ■Ursa Major社は防衛業務に積極的に注力し、1億ドルの新規資本を確保(052) ■ヴァルダ・スペース社が5回目のミッションを打上げ、AFRLの飛行試験を継続(083) | ■アリアン6が センチネル-1D レーダーイメージング衛星打上(009) ■Firefly社はAlphaロケットの燃焼試験失敗の原因を特定(033) ■中国は今週末、商業用朱鶴3号ロケットによる初の軌道打上げとブースター着陸の試みを予定(081)(図-25) |
| 【その他】 | ■中国が有人宇宙船「神舟21号」を打上げ、3時間半後に中国宇宙ステーションへ到着(002) ■国際宇宙ステーションで宇宙飛行士の長期滞在が開始されてから25周年(006) ■新たな月面協力にはインドと日本が注目(007) ■ホワイトハウスはアイザックマン氏をNASA長官に再指名(012) ■中国は宇宙デブリの衝突の可能性から神舟20号の乗組員帰還を延期(014) ■アイザックマン氏の再指名は宇宙産業の多くの支持を得ている(016)(図-3) ■科学委員会のトップがNASAゴダード施設閉鎖の停止を要求(030) ■有害な月でのゴールドラッシュ状況を回避(050) ■上院商務委員会がアイザックマン氏再指名に関する公聴会を予定(063) ■ESAが月着陸船のタレス・アレニア・スペース社主導のコンソーシアムを発表(065) ■商業宇宙ステーションの開発会社スターラブ社が戦略的投資を確保(070) ■NASAは次のスターライナーミッションでは貨物のみを搭載する契約変更(073) ■ノースロップ・グラマン社はISS最終段階での貨物サービス提供に選定(078) | ■ゴールデンドームが核兵器を無意味にした理由(047)(図-15) ■カイメタ社とiRocket社が多軌道ゴールデンドーム迎撃機連携に取組む(057) ■スター・ウォーズの再演:宇宙ベースのミサイル防衛の偽りの約束(074) ■宇宙軍はゴールデンドームのもとで宇宙基地迎撃機の初試作契約を発注(077)(図-23) | ■なぜ月は南シナ海ではないのか(004) ■中国は膨張式宇宙製造モジュールの地上試験を実施(008) ■Intuitive machines社がlanteris space systems社を買収(010) ■原子力エネルギーは米国の宇宙分野のリーダーシップの鍵(019)(図-4) ■中国は宇宙飛行士のための救命ボートを提供するため神舟22号宇宙船を打上げる予定(046) ■なぜ今人類がルナーシード金庫を必要とするのか(059) |
| 【国内】 | ■ロケットラボ社が日本のヤチホコ衛星の打上げ準備が完了(005) ■インターステラテクノロジズ社の「ZERO」初号機に日米3衛星が合計7機搭載に(054) ■(図-20) ■Iceye社が日本との契約を獲得し国際展開と衛星レンジ推進(067) |
