海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2025年10月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳

論説:IAC 2025 Sydney(村上)

IACが9月29日から10月3日Sydneyで開催された。オーストラリアは日本からは南半球に行くので近いとは言えないが時差が殆ど無いので行き易い国と感じている。それに対して欧米からは遠く地球の果てと印象が強くオーストラリアは縁遠い国との印象を昔から持っているとのことである。誰に聞いても行きたくは無いが仕方ないので来たと話していた。案の定欧米からの参加者は少なかった。
一方で、中国からの参加は多かった。元々中国はオーストラリアを投資先と考えていることもあり頻繁に交流を行っていることも理由にあると考える。
出展数も多く何だか中国で行っている様な気分にさせられた。

期間中毎年IACを目指して大きなニュースが入って来るのだが、今年は驚くほど静かだった。
米国NASA長官代理が出席し関係国と協力して探査を促進したいと述べていた。米国第一主義の中、こう言われても協力してどんどん推進しましょうと言うことにはなりそうもない上に米国予算はペンディング状態となっており、米国が今後どの方向に向かうのか分からない状況を自ら招いていることもありどうしたものかと言った感じにさせられた。
各国は表面上は米国のリーダーシップの元、協力して進めて行こうと言っているがどの様に付き合うべきか悩んでいた。
一方で、欧州や日本は単独で大きなプロジェクトを行って行くことは難しいこともあり、協力出来るところは協力を促進したいと話していた。
米国との付き合い方としてここまで我が儘な態度を取られるとどうぞご自由にとも言いたくなる。

一方で、中国は探査計画を着実に進めていることもあり、各国に参加を呼び掛けていた。依然として幹部は英語で話すのに苦労していたが中堅以下の人は英語で話も出来るし、出来るだけ友好関係を作りたいと言う感じで接触して来た。思わず、一緒にやりたいですよねと言ってしまいそうになり、まずいと思い、また、後でと言って別れた。
日本としては、何でも持って行きたがる中国と積極的に協力することは難しく、同じ様に困っている欧州と協力するしか選択肢がないと思った。

何れにしても国際協力と言っても表面上の話となって来ている今日においては、自国で打上げ手段を持ち、衛星を作れて、サービスを提供できる状況は整備して置くことは必須と考える。
ただ、言わずもがなではあるが、適正な価格で提供出来る様にすることは必要ではある。

一方で、半導体や造船は国家として必要な技術であるにも関わらず、産業の衰退を抑えることが出来ず、結果的に多額の費用を投入して産業を維持することが必要となって来ている。宇宙はこれまでマーケットが小さかったこともあり、宇宙先進国と言っても比較的追いつけそうな錯覚を何時も抱いて来た。現在は市場が大きく拡大しているのと変化が大きい時代に入っており、行動を起こさないと置いてきぼりを食ってしまい兼ねない状況にある。

幸い我が国は戦略基金で開発費の底上げが行われている。これをチャンスとして捉えて産業の活性化に繋げて欲しいと思った次第である。


Novaspace社レポート『Satellites to be Built and Launched(第28版)』のご紹介

第28版:全248ページ
  • このたび、Novaspace社より、『 Satellites to be Built and Launched』第28版が発行されましたのでご紹介させて頂きます。
  • 従来、本レポートをご購入頂いている顧客の方々は本レポートにて取り扱っている世界の衛星製造・打ち上げ市場に関する詳細な分析内容などにつき既にご存じ かと思いますが、今回の新版ではさらに内容を拡充しております。
  • 最新の第28版では、業界を形作る最新の動向を反映するため分析を拡充・更新しました。主な内容は以下の通りです:
    • 米国政権下における新たな政府優先事項と政策
    • 数百件に及ぶ新規衛星・コンステレーション計画の追加
    • 衛星通信市場の変革と事業者コストベンチマークの徹底分析
    • 小型GEO衛星の台頭とスターシップの潜在的影響に関する洞察
    • 長期計画のための20年間の将来展望シナリオの拡充
  • 主な調査結果:
    • 今後10年間で打ち上げられる衛星は約43,000基、製造・打ち上げ総額は6,650億ドルに上る
    • 防衛分野が将来の市場価値の主要な牽引役であることが確認(2025~2034年の収益の48%を占める)
    • 5つのメガコンステレーションが打ち上げの66%を占めるが、市場価値全体の11%に留まる
    • 小型プラットフォームが経済性を再構築する中、GEO通信衛星需要が再び拡大
  • 本レポートの詳細につきましては、下記のURL (Product Page)にてご確認頂けます。また、無料の要約版(Free Extract)もダウロード可能です。 Satellites to be Built & Launched — Product Page
  • さらに本レポートにつき、ご質問及びご確認事項などがございましたら、Novaspace社日本事務所レポート担当の大石(tsuyoshi.oishi@nova.space)までご連絡ください。

2025年10月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【民間宇宙トピックス】【防衛宇宙トピックス】【その他】
【衛星】■Astroscale U.S.社がNASAと提携してRPOテストを実施(017)(図-20)
■AST SpaceMobile社とVerizon社の契約により、顧客は直接セルラーアクセスが可能になる(023)
■プラネット社が日々の地球画像撮影のための新しい衛星ラインを発表(026)(図-8)
■Momentus社とSolstar社が地球低軌道で通信/輸送/インフラ提供(033)
■Orbotic Systems社は最近、高度なアクティブ スペース デブリ除去システムでNASA フェーズ II受注(042)(図-13)
■Samara Aerospace社のポインティング技術が軌道上で実証される(052)
■10,000機目のスターリンク衛星が打上げ(054)
■Eutelsatの第 1 四半期中のビデオ稼働は停止、OneWeb は稼働(055)
■ゴールデンドーム迎撃機のデモのために衛星無線機が求められる(006)
■Cubic社は「Vector」端末で軍用衛星通信市場をターゲットに(015)
■ゴールデンドーム計画、そのストーリーは何か? (022) (図-6)
■Viasat社はUSSFからProtected Tactical SATCOM-Global(PTS-G)プログラムの契約締結(030)
■地球に依存しない AI が宇宙作戦の次の堀である理由(037)
■Viasat社は米軍衛星市場を狙う(040)(図-12)
■欧州は防衛旗艦プログラム説明、2026年迄にスペースシールド確立(044)
■Planet Labs社がアジア太平洋地域の海洋情報に関する1,280万ドルのNGA契約を獲得(047)
■スタートアップが独自の資金で宇宙ベースのミサイル防衛に挑戦(058)(図-16)
■中国長征5号の打上げで機密静止衛星シリーズを拡大(063)
■クォンタム・スペース社のレンジャー・プライム・ミッションは2026年6月の打上げを目指す(064)
■HEOの衛星間イメージングで中国技術試験宇宙船の秘密が判明(070)
■ESAが宇宙安全保障プログラムを概説(074)
■投資家は防衛用途を持つ宇宙企業に引き寄せられる(076)
■国防総省は紛争リスクの中「政府所有/商業運営」衛星に着目(080)
■中国と米国、宇宙交通調整に向けた最初の一歩を踏出す(002)
■Sateliot社は、LEOから商用デバイスへの標準ベースのIoT接続を歓迎(018)
■宇宙軍はミューオン社の山火事監視衛星を防衛用気象画像に活用(019)
■中国のサプライズ打上げで実験衛星「十堰31号」が軌道に(032)
■中国がサウザンドセイルズ衛星コンステレーションの打上げを再開、CASスペースが新たな国際ペイロードを打上げ(048)
■Quantum Dynamics Enterprises社が推進剤を使用しない機械式推進システムの米国特許を取得(068)(図-17)
■ボイジャー・テクノロジーズ社がExoTerra Resources社を買収(071)
■ノースロップ・グラマン社がAI設計の宇宙船推進装置要素で共同開発(073)(図-18)
■需要の増加とコストの低下で衛星サービスの道筋が明確に(075)
■中国のStarDetect社が軌道上コンピューティングと宇宙領域認識サービスを拡大するためにシリーズA資金を調達(079)
【打上】■2回目のニューグレンロケット打上げに向けて準備が順調に進行中(008)(図-3)
■ギルモア・スペース社は来年飛行を再開する計画である(012)(図-5)
■ブルーオリジン社は2025年6回目の有人ニューシェパード打上げ便を運航(020)
■ストーク・スペース社は同社の完全に再使用可能なノヴァ打上げロケットの製造規模を拡大するために5億1,000万ドルを調達(024)(図-7)
■スペースX社は次のスターシップ試験飛行の準備を開始(029)
■スペースパイオニア社が中国の商業打上げブームが加速する中、3億5,000万ドルを調達(034)
■スペースX社のスターシップが11回目の飛行試験を無事に完了(035)(図-10)
■アリアン64ロケットの初打上げは2026年に延期(045)(図-14)
■アリアンスペース社はコペルニクス・センチネル1Dの11月4日打上げを計画、なぜ2衛星が1衛星よりも優れるのか?(065)
■インドLVM3ロケットでインド最重量通信衛星CMS-03打上げ準備完了(069)
■スペースX社は2026会計年度に予算配分された米国国家安全保障用打上げ機の大半を占める(013)
■Firefly社は防衛関連業者SciTec社を8億5,500万ドルで買収(014)
■中国巨大商業固体ロケットが黄海のバージから3基の衛星を打上げ(028)
■SpaceXが Lockheed Martin社の21機の衛星を‘Transport Layer’国防ネットワーク用に打上げ(038)
■スペースX社はヴァンデンバーグでファルコン打上げ増加承認を獲得(041)
■国防に資金が注がれているが、デュアルユースが本当のスイートスポットである(046)(図-15)
■ランドスペース社は中国初のロケット打上げ・着陸の最終準備を開始(051)
【その他】■民間ミッションスタディ:オリオン宇宙船をサービスとして提供するための一歩(001)(図-1)
■惑星探査会社はまだ実現可能再突入計画を検討中(004)
■スターラボ社のパートナーが商業宇宙ステーションの実物大モックアップ発表(011)(図-4)
■NASAは月面Wi-Fiシステム開発のSolstar Space社にSBIR契約発注(025)
■NASA JPLでのさらなるレイオフ(031)(図-9)
■インパルス・スペース社が月面により多くの質量を届けるためのミッション・アーキテクチャ案を発表(036)(図-11)
■政府機関閉鎖が続く中、科学界は長期的な予算問題に引き続き注目(039)
■サザン・ローンチ社とヴァルダ・スペース社がさらに20機の宇宙船がクーニバ試験場帰還するミッション契約を締結(043)
■アメリカが最初に月に到達するためには「プランB」が必要(049)
■NASA長官代行ダフィー氏はNASAがアルテミス3号着陸船の契約を競争入札にすると発表(050)
■政府機関閉鎖中もアルテミス2号準備継続、SLSにオライオン宇宙船搭載(053)
■マスク氏がNASAリーダーシップ討論会中にNASAダフィー氏を批判(060)
■次の宇宙開発競争は夜に勝負がつくだろう(061)
■スペースX社はスターシップ月着陸船を簡素化されたアプローチ取組を擁護(077)
■ゴールデンドームに関するステッカーショックの背後のスプレッドシート(009)
■欧州の防衛力強化のための欧州委員会の新たなロードマップ(067)
■ゴールデンドーム計画の誇大宣伝が情報の空白に遭遇し、業界は国防総省の方向性提供を待つ(078)
■Intuitive Machines社が820万ドルのAFRL契約延長を確保(081)(図-24)
■中国は2025年末迄に一か八かの月探査計画と再使用可能な打ち上げ試験を実施予定(005)(図-2)
■エアバススペース社がタレス社と合併予定(007)
■大西洋の両側の国防予算が宇宙産業を再構築(021)
■月面採掘のゴールドラッシュが近づいており、成功するには2つの世界を橋渡しする必要があります(059)
■エアバス社、レオナルド社、タレス社が宇宙事業統合で合意(062)
■神舟21号は打上げから3.5時間後に天宮宇宙ステーションとの急速ドッキングを完了(083)(図-25)
【国内】■Ispace社は新型月着陸機環境試験を実施。FMは2028年打上げ予定(010)
■Ispace社が次世代小型月面探査車の開発に巡りトヨタ自動車と契約締結 トヨタが技術支援へ(057)
■H3ロケットが初のHTV-X貨物宇宙船を打上げ(066)(図-22)
■新型補給機「HTV-X」がISSに到着 JAXA油井宇宙飛行士がロボットアームでキャプチャ(082)
■Synspective社がエレクトロン社のロケット打上げを10機分追加発注(003)
■Synspective社の次回StriX衛星打上げ日が予定される(016)
  (図-19)
■JAXAの革新的衛星技術実証4号機は米企業のロケットで宇宙へ 2025年度内の打ち上げを堅守(027)(図-21)
■QPS研究所の小型SAR衛星「ヤチホコ-I」は11月6日に米国で打上げへ(056)
■Ispace社がインドの宇宙開発スタートアップと覚書 推進剤補給インターフェイスを搭載へ(072)(図-23)