海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2025年9月30日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳

論説:World Space Business Week(WSBW)とSpace Defense and Security Summit(SDSS)(村上)

WSBWは9月15-19日パリ市内のホテル(Hôtel du Collectionneur)にて、SDSSは9月16、17日にて開催した。
参加者については、2,000名でほぼ昨年と同数であった。日本からも50名以上の参加を頂いた。

世界全体が緊張が高まり、自国優先主義となる中、これまで宇宙の商業と防衛は裏表の関係にあることを余り表立って言うことは敢えて避けて来たところがあった。これは、両者の活動に取って敢えて言わない方がメリットが大きいかったことによるかと思う。

ところがここに来てウクライナの紛争でStarlinkの利用や衛星画像の使用が活発になるに連れて最早自明の理となって来ている。ガザの進行でも商業衛星データの利用は格段に進んで来ている。

WSBWやSDSSでも主権を守る為にどこまで自国で輸送手段や衛星技術を持つべきかと言った観点での議論が多かった。どこの国も財政状況が厳しく、社会保障費の負担に苦しむ中、防衛予算や宇宙関係の予算を増額することは厳しいが、ウクライナ危機を目にして米国の協力が期待出来ないことが分かった中、欧州では防衛費や宇宙関係の予算の拡大と欧州としての主権維持の必要性を訴えていた。

その様な中、宇宙の基本である打上げについては、全体に占める売上の割合は少ないのに必要性の度合いは極めて高くなっていることを各国述べていた。Space-Xが2日に1度安定的に打上げを行う中、米国のULA、Blue Origin、欧州や日本は現状数回の打上げしか出来ていない。
国内需要を満たす為にも各社とも20回程度の打上げを目指したいと述べていた。
各社が打上げ能力の拡大を実現すると供給過多となり、バランスが崩れてしまうが、どこが安定的に運用できる様になるかで今後市場の地図は変化すると考えている。

通信衛星については、Starlinkの影響で契約単価が大きく下がる中で、オペレータは統合の動きを強めていたり、小型静止衛星やフルデジタル衛星への切り替えや低軌道衛星でのサービスで乗り切る姿勢を示していた。
衛星メーカもオペレータからの発注が下がる中、AirbusとThalesの合併や衛星メーカの部門買収が活発化する等今後変化が避けられない状況にあることを認識した。

欧州が独自に整備を行っているIRIS2についても早く整備を進めて、今の計画よりサービスを充実させる必要があると関係者は述べていた。防衛利用を考えると理解出来るところであるが商業的な広がりを欠いた状態では税金ばかり掛かって先行きが読めない状況となってしまうかと思う。 OneWebとの連携による機能分担等、早く検討を進める必要があると感じた。

地球観測については、商業市場の拡大は期待されているものの、米国の商業データの予算削減により、業界の淘汰が進む感じを持った。解像度が高く、コンステレーションが充実しているところは生き残るが、精度が悪く、衛星機数が少ないところは事業が立ち行かなくなるではと感じた。

パリオリンピックから早いもので1年、日本選手の検討が光り、日本の存在感は大きくなった。
WSBWでも日本からの参加者も多数登壇頂き、パネルディスカッションで堂々と話をして頂いた。存在感は大きくなって来ている。
日本が世界をリードする日は遠くないかもと感じた1週間であった。
また、来年、皆様とお会い出来るのを楽しみしています。


2025年9月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【民間宇宙トピックス】【防衛宇宙トピックス】【その他】
【衛星】■ベンチマーク社が小型衛星のアクイラ・ハイブリッド・トランスファ宇宙船開発を前進させるためのNASAフェーズIISBIRを受注(010)(図-3)
■タレス・アレニア・スペース社がESA主導の都市温度環境モニタリングコンステレーション研究にナノアビオニクス社を採用(019)
■ジェットブルー航空が機内Wi-Fiシステムにプロジェクト・カイパーを選択(020)
■EchoStar社はSpaceX社に周波数を販売し、LEO計画を終了(021)
■BlackSky社とIceye社が地球のデジタルツインを作成するグループに参加(026)
■エアバスCEOは欧州の宇宙事業の統合に大いにコミットする意向(029)
■ボーイング社が衛星太陽電池アレイの生産を加速するために3Dプリンティング技術に着目(038)
■Amazon社のKuiperがKA-03ペイロードを展開(050)
■SES社はK2 Space社とのパートナーシップによりMEOの複数展開に移行(054)
■アマゾン社のプロジェクト・カイパーが来年3月末までに5カ国でブロードバンド・サービスを計画(058)
■Globalstar社が運用周波数拡大でモバイル衛星接続の次世代突入(059)(図-14)
■小規模なGEO戦略は垂直統合をめぐって分岐(062)
■米国宇宙軍が本部を移転(003)(図-1)
■Telesat社はゴールデンドームの衛星帯域幅ブロックを国防総省に提供(009)
■米国宇宙軍が静止通信に小型衛星を使用(013)(図-4)
■Maxar社は米陸軍複合リアリティシステムに3D地形データを提供(030)
■軍事費とデバイスへの直接競争が宇宙経済を再構築する(047)
■SDA社が次世代宇宙安全システム構築にGMVを選択(051)
■宇宙軍司令官が衛星追跡は現代の脅威に対して「遅すぎる」とコメント(065)
■米国防衛・安全保障機関が地球観測データの需要を促進(070)
■スペース・ノルウェー社とSSTL社がレーダー衛星計画で協力(073)
■ロッキード・マーティン社が米軍のTranche 1 Transport Layer計画の次回打ち上げに向けて21基の衛星を納入(077)(図-22)
■米国が中国の急速な軍事的前進に直面する中、空軍長官が「スプートニク時代」再現を警告(078)
■中国衛星はMaxar社リモートセンシングと早期警戒衛星をイメージしている(081)
■宇宙防衛の次章は常に機動する衛星である(084)(図-23)
■企業が協力して極超音速機追跡機能を実証(025)
■ヨーク・スペース社は最大の衛星配信でマイルストーンを達成(049)
■Viasat社とSpace42社が直接デバイス・サービスの衛星スペクトル保持(055)
■インパルス・スペース社とアンドゥリル社がGEOで自律型宇宙船実証(057)(図-13)
■ESAのSkimsat VLEOミッションはTAS社と協力してRedwire社と共に前進(060)(図-15)
■Maxar社とEcopia社がAI地球マッピングシステムを展開(061)
■Sentinel-1Dが合理化されたシミュレーション訓練を開始(066)
■中国が新ガイドラインとライセンスでダイレクト・ツー・デバイス衛星を推進(068)
■高機動小型GEO衛星に焦点を当てた新軍用衛星通信(071)(図-17)
■Quantum Space社がフェーズフォー社推進系部門買収(076)(図-18)
■中国はブロードバンド、IoT、気象衛星の打上げで増強(089)
【打上】■Andøya Space社とRheinmetall Nordic社は欧州の宇宙能力を強化するためのLOIに署名(002)
■ギルモア・スペース社がオーストラリア衛星軌道上投入しマイルストーン達成(004)
■FAAがスターシップロケットの環境への影響を調査中であるが、ファルコン9の打上げ増加を承認(018)
■ヨーロッパはスペースX社の数十億ドル規模の市場拡大の中でデバイスの直接販売強化(024)
■ロケット帰還用の推進剤を作るのに十分な水を運ぶことで火星へのスターシップミッションが極めて簡素化される(042)
■スペースX社はノースロップ・グラマン社の最大の貨物宇宙船シグナスCRS-2 NG-23を日曜日にケープから打上げ(046)
■打上げ会社各社は挫折にもかかわらずフライト料金の引上げを倍増(048)
■スペースX社がテキサス湿地帯を最も注目されている宇宙港に変えた手法(052)
■アストラ社が2026年半ばにロケット4の初打上げを計画(069)
■NASAの安全委員会がスターシップロケットの月着陸船開発が何年も遅れる可能性があると警告(075)
■ファルコン9が3つの宇宙気象ミッションを打上げ(082)
■ニューグレンロケットでのESCAPADE打上げは10月下旬か11月上旬予定(085)
■アルテミス2は早ければ来年2月にも打上げられる可能性がある(086)(図-24)
■パデュー大学はヴァージン・ギャラクティック社と専用のサブオービタル機研究ミッションを実施(090)
■ブルーオリジン社とアンドゥリル社が軍用ロケット研究契約を獲得(017)(図-6)
■スペースX社は軍事ネットワーク・トランスポート層に21基の衛星を打上げ(036)(図-9)
■米軍は中国の再使用可能なロケット開発推進を宇宙安全保障上の懸念と見なす(080)
■ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社がステータス・レポートを提供(012)
■中国が長征3号で実験衛星石燕29号をGEOに打上げ、また固体ロケットである商用セレス1号で3基の衛星を打上げ(014)
■マスク氏はスターシップが来年100トン打上げ開始と確信(035)(図-8)
■中国がエンジン再着火を含む新型月ロケットの2回目の燃焼試験を完了(041)(図-11)
■欧州にスペースプレーンが必要か (063)(図-16)
■打上げスタートアップの中国iSpace社が再使用可能なロケット競争をヒートアップさせる中、新たな資金を確保(072)
【その他】■NASAが商用重点の月面原子力計画を推進(006)(図-2)
■NASAの有人探査プログラムでのアルテミス計画が必要とするものは?(007)
■NASAは中国より先に宇宙飛行士の月面着陸が可能か?(008)
■スペースX社のカーゴドラゴン補給船がISSの試験的リブーストを実施(015)
■NASAが商業宇宙ステーション開発の次段階の詳細を発表(016)(図-5)
■宇宙飛行士を月や火星に送ることは写真撮影以上のミッションが必要(022)
■NASAの長期計画にない短期宇宙ステーションミッション(027)(図-7)
■ラムセス小惑星ミッションは重要な資金調達に先立って順調に進行(028)
■宇宙商務局は計画取り消しで予算の40%を失う(031)
■NASAは火星の岩石に過去の生命の潜在的な証拠があると強調(034)
■ランデブー・ロボティクス社が宇宙構造物の自動組立技術開発資金調達(037)
■下院予算推進派は減額を脅かされているNASAミッション支援を提供(039)
■Vast社はNASAの新しい商業宇宙ステーション戦略を支持する(045)
■Astro Digital社がStar Catcher社の太陽エネルギー・グリッドに接続(053)
■Axiom社とSpacebilt社がISSデータセンターノードを構築(056)
■NASAがブルーオリジン着陸船賞でVIPER社月面探査機を復活させる(074)
■NATOのゴールデンドームはアメリカのゴールデンドームよりも優れている(001)
■Firefly社がゴールデンドーム構築に向けてアルファロケットや衛星を投入(040)(図-10)
■ゴールデンドーム構築コストは設計依存するが数十億ドルから数兆ドルと想定(043)(図-12)
■トランプ大統領のゴールデンドームは黄金の夢か黒い悪夢か?(064)
■安全性、進歩、そしてアルテミス2.0の必要性は(023)
■ゼノパワー社が宇宙用原子力電池用アメリシウム241の供給を確保(083)
■NASAはシエラスペース社が主体を防衛業務に移行する中、ドリームチェイサーのISSへの貨物契約を修正(087)(図-25)
■Redwire社はAxiom社宇宙ステーションモジュールに太陽電池アレイを提供(088)
【国内】■JAXA「イプシロンS」第2段モータ試験爆発原因調査で状況報告。小型モータの燃焼試験を準備中(032)
■アストロスケール社が衛星デブリ観測衛星「ISSA-J1」をPSLVロケットで2027年春に打上げへ(044)(図-20)
■荏原製作所が低温LNGを用いたロケットエンジン用電動ターボポンプの運転試験に成功(067)(図-21)
■横河電機がトヨタと有人与圧ローバー「ルナクルーザー」向け制御プラットフォーム等の研究開発契約を締結(079)
■スペースワン社がカイロス2号機の飛行中断について原因究明報告(005)
■SkyPerfect JSAT社が大規模拡張を計画(011)(図-19)
■日本のIHI社がSatVu社と熱画像パートナーシップで計画を拡大(033)