海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース
2025年4月30日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク
編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳
論説:Space Symposiumについて(村上)

Space Symposiumの状況報告をさせて頂きます。
今年は40回目の節目の年であり、米国国内だけでなく、海外からも多数の参加があった。関税に関する大統領令が出たばかりであり、今後の経済はどうなるのだろう。宇宙への影響はどうなるかどこへ行ってもこの話題で持ち切りであった。
そんな中、米軍もNASAも対中国を意識して政策を進めていることを認識した。
米軍に関しては、以前に増して軌道上で中国の衛星からの監視を頻繁に受けており、米軍のシステムが最早盤石なものではなくむしろ脆弱であることが明らかになって来ていると話していた。
米国のシステムの改善が遅れているのと中国が予想以上に力をつけて来ており、宇宙における優位性が崩れつつあるとの認識が強く出されていた。特にサイバーで衛星が攻撃を受けた場合、ダメージはかなり大きなものになる可能性がある。
米軍内の動きは遅く殆ど何も手を打っていないのではとも話していた。従来の静止衛星重視から低軌道に小型衛星を配備し分散化を図っており、耐性はかなり増している気もするのだが、通信システムやミサイル監視システムの主要要素は静止軌道に配備されているのは事実である。従来は中国の衛星は軌道上で複雑な運動を出来ず、米国の衛星に近づいても捕捉するまでには至らなかった。しかし、かなりレベルが上がった現在では追跡から振り切ることは難しくなって来ているとのことであった。
低軌道衛星については、中国の問題と言うよりは、米国の問題で多数のメーカに分けて発注した結果、全体として機能出来ていないことや契約から2年単位で打上げまで持って行く革新的な計画を進めて来た結果、前シリーズの課題を反映できない事象が起こっている。
また、従来のシステムとの統合も道半ばとのことである。静止衛星中心で行っていた時よりも遥かにスピードはアップしたものの長官が休職したこともあり、混乱はひどくなっているとのことであった。4月には長官が復職したのでまた加速が図られることを期待している。

宇宙に関しても、米国は月と火星探査を並行して実施することを新長官候補が議会の公聴会で述べており、月から火星にシフトする動きには一定の歯止めが掛かった形となった。この大きな理由が、探査に力を入れている中国に対して月を明け渡すと中国が独自の開発を行って領土の拡大を図るのではとの懸念が出ていることによる。中国は月面の裏側への着陸も実現しているし、月からサンプルも大量に持ち帰っている。赤い力がかなり進んで来ているのを意識せざるを得なくなって来ているのは間違いない。
今回のSpace Symposiumにて変化を感じたのは、Space-Xは最早ブースの展示を辞めて、ストラップに名前を入れるだけになった。業績が低迷するBoeingは長年行って来たレセプションを今年から中止した。Sierra Spaceもブースの設置を辞めた。この様な中で小型静止衛星を製造しているAstranisは昼食会やレセプションを行い、多くの人の関心を集めていた。Astranisは打上げ後、上手く作動出来ない課題を持つ中でも、前を向いて進むと話しており、これから台風の目になる可能性を持っているなと感じた。
NOVASPACEは今年も特別セッションを開催し、多数の参加を得た。この形のセッションの開催は4年目迎え、大分定着して来たとの感じを持っている。
2025年4月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス
【民間宇宙トピックス】 | 【防衛宇宙トピックス】 | 【その他】 | |
【衛星】![]() | ■MDA Space社がSatixFyを買収し、コンステレーション衛星製造を強化(002) ■プロジェクト・カイパーが待望の運用衛星打上げ準備開始(005) ■ユーテルサットがLEO衛星からの航空サービスを開始(006) ■フラウンホーファーIISが衛星5G時代にもたらす(016) ■中国のメガコンステレーション衛星打上げは、1世紀以上にわたって軌道上に散在する可能性があるとアナリストは警告(019) ■Viasat社はマルチオービット混成にTelesat Lightspeed LEO追加(021)(図-7) ■SES社CEOのAdel Al-SalehはSESを新たな多軌道領域に押し上げる(040) ■マルチオービットの成功か、それとも単一障害か?(048) ■ボーイング社の量子衛星デモ用に構築された地上ツインモデル(052) ■OMBはNOAAが静止衛星の計画を縮小することを提案(063) ■中国の軌道物流スタートアップInfinAstro社がエンジェルラウンドの資金実施(064) | ■Sierra Space社がUSSF衛星プログラムのレジリエントGPS衛星技術を実証(003) ■衛星「フィンガープリント」技術を軍事用途に適応させるスリングショット加速(004) ■米国宇宙軍司令官が中国脅威は軌道上不安定化能力と言及(007) ■ミサイル防衛局が「ゴールデンドーム」で民間企業に門戸を開放(018) ■宇宙軍ミサイル追跡「フー・ファイター」衛星が設計マイルストーンをクリア(023)(図-8) ■Firefly Aerospace社がElytra宇宙船による軌道上ミッションで国防総省と契約締結(025) ■Umbra社が米軍向けの海上監視衛星を開発(028)(図-11) ■ボーイング社傘下ミレニアム・スペース社が防衛需要対応で生産能力拡大(032) ■米国宇宙軍は国際協力戦略を展開中(037) ■中国がTJS-17を打ち上げ極秘衛星シリーズを拡大(042) ■L3Harris社が「ゴールデンドーム」での地位を争う中、宇宙機製造施設拡大(056) ■NROは2年間で200機以上の衛星を配備するマイルストーンを達成(059) ■宇宙システム司令部がノースロップ・グラマン社に約1,500万ドル契約(065) ■L3Harris社はゴールデンドーム用ミサイルセンサーを競争で優位に(074) ■DARPAはLASSO SSAの実行企業を求める(080) ■ゴールデンドームの成功にはデータアーキテクチャが最重要課題であり、国防総省の準備はまだ不十分(083) | ■008Portal Space Systems社は機動性の高いSupernova宇宙船で1,750万ドルを調達(008)(図-1) ■010スタートアップ企業が軌道上衛星の自律性を実証(010) ■012ノースロップ・グラマン社が給油技術の宇宙空間実証企業に選ばれる(012)(図-4) ■029GomSpace社とNeuraspace社が提携し、衛星衝突回避システム開発を推進(029)(図-12) ■033AFWERX Direct-to-Phase 2 SBIRに採用されたFlight Works社は計量と統合された給油を備えたモジュラー推進システムに焦点を当てている(033)(図-13) ■038USSFは米国の商業宇宙産業を強化するためにオービタルウォッチを打上げる(038) ■041インドの推進メーカーが米国進出に加わる(041) ■044AIの誇大宣伝と現実の間のギャップを埋める(044) ■046RTX社傘下のBlue Canyon Technologies社が新しいリアクション ホイールを開発(046) ■050新しい宇宙船ドッキング技術を実証するスタートアップ企業(050) ■054衛星アプリケーションカタパルト社とエアロスペースコーポレーションUK社は軌道上サービス機能で協力(054) ■Katalyst Space社がAtomos社を買収、宇宙空間サービスを加速(072) |
【打上】![]() | ■Rocket Lab社は厳しいライドシェアの競争があるがElectron需要を見込む(039) ■Blue Origin社が女性のみのNew Shepard弾道飛行を実施(047) ■Firefly Aerospace社のFirefly Alphaは金曜日にロッキード・マーティン衛星FLTA006メッセージを打上げ(051) ■Dawn Aerospace社は弾道飛行研究のため米国大学との飛行協力を確保(060) ■ULA社Atlas 5はAmazonのProject Kuiperの打上げ準備ができている(081) ■新型P160Cロケットモーターを搭載したアリアン6とベガランチャー(082)(図-24) ■中国とマレーシアが国際赤道宇宙港プロジェクトについて検討(084) ■ULA社はAmazon初の運用衛星の打上げに成功(085)(図-25) | ■SSC On-Ramps 2がNational Security Space Launch Phase 3 Lane 1契約に新たなプロバイダーを追加(011)(図-3) ■SpaceX社、ULA社、Blue Origin社3社が2029年までの米軍衛星打上げ契約で137億ドルを獲得(015)(図-5) ■宇宙軍がGPS衛星の打上げをULA社からSpaceX社に変更(022) ■ミノタウロスIVロケットが国家偵察局のスパイペイロードを打上げる(053)(図-14) ■中国は長征6号A型ロケットで機密実験衛星6機を打上げる(058) ■Rocket Lab社がKratos社から国防総省のHASTE打上げ契約を獲得(069)(図-17) ■アストロテック社はヴァンデンバーグでの打上げ前衛星処理を加速する7,750万ドルの契約を獲得(078) | ■中国が長征2Dでインターネット技術試験衛星を打上げる(001) ■長征3号B型機は宇宙データ中継ネットワークを強化するためのTianlian-2衛星を打上げ(077) |
【その他】![]() | ■VAST社がNASAの施設でHaven-1をテストする契約に署名(009)(図-2) ■NASAはISSへの民間宇宙飛行士ミッションの2提案を募集(013) ■Fram2社が極軌道民間宇宙飛行士ミッションを完了(014) ■Axiom Space社がOrbital Data Centerノード打上げ(024)(図-9) ■アイザックマン氏はNASAは月と火星の計画を同時に追求すべきだと言及(034) ■アルテミス計画推進は継続中(036) ■ホワイトハウスの最新提案はNASAの科学予算を削減し、主要なミッションをキャンセルする(043) ■NASAとロシア・ロスコスモスとの打上げ座席交換契約を2027年まで延長(045) ■NASAはアルテミスIIの打上げに先立ちオリオン宇宙船の洋上回収に向けて訓練を実施(049) ■月周回拠点ゲートウェイの与圧モジュールがイタリアから米国に空輸(066)(図-16) ■Atmos Space Cargo社は再突入の不確定にもかかわらず初回テスト飛行成功宣言(070)(図-18) ■SpaceX社はカーゴドラゴン補給船打上げとISSへのドッキングに成功(075)(図-23) ■ATMOSスペースカーゴは第1回再突入ミッションを実施(079) | ■DARPAは水探査月周回衛星の提案要請中(062) ■アストラ社は国防総省支援計画でロケット4で貨物輸送を目標(068) | ■Aetherflux社が宇宙太陽光発電システムのために5,000万ドルを調達(017) ■宇宙太陽光発電システムが現実になりつつあり米国は支援を必要(020)(図-6) ■NASAと国防総省が共同でブレークスルー態勢を整えた宇宙原子力発電開発(027)(図-10) ■宇宙太陽光発電システム立上げ準備を進めるスタートアップ企業(035) ■商業宇宙ステーションでは多国間調整が必要となる(055) ■中国は月、火星計画両方ともリードする(057) ■地球と月空間は現在、3中国衛星によって占められている(061)(図-15) ■神舟20号の有人宇宙船が天宮宇宙ステーションに到着(071) ■中国が嫦娥8号の月南極ミッションに国際ペイロードを搭載(073) |
【国内】![]() | ■Redwire社とispace U.S社が月面ミッションで協力(031)(図-20) ■JAXA大西さんが日本人では3人目のISS船長に就任(067)(図-21) ■JAXAの地球観測衛星を搭載するH-IIAロケット最終号機(50号機)は6月24日に打上げへ(076)(図-22) | ■GITAI社は政府契約遂行んのために米国に防衛関連子会社を設立(026) ■アストロスケールU.S社が2026年のミッションで宇宙軍の宇宙船2機に燃料を補給予定(030)(図-19) |