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2024年11月30日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳

論説:軌道上サービスについて(村上)

軌道上サービスについては、米国大統領府にて2022年12月重要性と取組の必要性について、科学技術担当から発表され、その後、2023年米国Space SymposiumにてNASAが中心となって米軍も含めて取り組みを進めて行くとの発表があった。 これに対応してConsortium for Space Mobility and ISAM Capabilities (COSMIC)が設立されて業界のからのニーズや政府への働き掛けを目的として活動が行われている。

軌道上サービスは宇宙活動域が拡大して行く中で技術的な発展が欠かせないし、軌道上で燃料補給や組立やデブリ観測を行うにしても標準化がなされていないと非常に効率の悪いシステムが出来てしまう発想から推進が必要との方針が出されて来た。

米軍の衛星は、監視衛星からの追跡を逃れる為、現在頻繁にマニューバーを行っている。この時効率の良い電気推進の推進系だけでは、監視衛星から逃れることが出来ず、化学推進系を用いてマニューバーを行っている。これに伴って、静止衛星の寿命である15年よりもかなり早く衛星を入れ替える必要が生じている。これを避ける為、燃料補給は早期に実装する必要があるとの意見が多数出て、軌道上サービスは脚光を浴びる様になって来た。

この状況は余り変わっていないし、むしろ状況は悪化しており、大規模な開発を行うべきとの意見は米国議会を中心にあるのも事実である。これを受けて米空軍や研究所等で技術開発プログラムが行われている。一方で、Northrop Grummanが推進している軌道上燃料補給サービスや他の補給システムの整備については、デモミッションにしか予算がついていない。

NASAの軌道上燃料補給ミッション(OSAM-1)も中止に追い込まれつつある。スケジュール遅れとコストの大幅な超過が理由であるもののNASAが実施している代表的な軌道上サービスだっただけに残念である。

現在、Space-Xでは月ミッションを実施する為、軌道上で燃料補給を計画しており、軌道上燃料ステーションも整備を行う計画である。民間がどんどん開発を進めている状況においてスピードが遅い政府としては、予算も厳しい状況では様子を見ている方が得策と思っている節がある。
Space-Xは斬新なアイデアと早い開発で他を寄せ付けない存在まで成長して来た。一方で、過度に1社に依存するのは危険があると感じている。軌道上サービスについても、米国においては、確実に技術を獲得する為のパイロットプログラムの実施と標準化を睨んだ燃料補給ステーションの整備は最低限進めるべきではないか。

一方で、欧州は近年軌道上サービスを見直し、技術開発プロジェクトとして実施する動きが出て来ている。軌道上サービスは、活動域が拡大して行く上で 欠かせない技術であり、我が国においても同様な動きが出来ないものかと感じている。


2024年11月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【Established Space及び他トピックス】【Hybrid Space】【Emerging Space】
【衛星】⚫ エアバススペース社、ライバルとの専門を統合するタレス-アレニア社との合併を検討(006)
⚫ 宇宙軍の戦略的進展の5年間(010)
⚫ アメリカ陸軍の宇宙システム軍のテトラ-1衛星ミッション完了(029)
⚫ ノースロップ・グラマン社、2026年のロボット搭載衛星打上げを検討(043)(図-12)
⚫ ボーイング社、先進的なO3bmPOWER衛星をSESに納入(050)
⚫ ノースロップ・グラマン社が製造したオプタスXはスペースXによる打上げ間近(051)
⚫ ESAが欧州のスタートアップ4社に資金提供を決定(055)
⚫ ロッキード・マーティン社の新しい中型衛星プラットフォームの打上げ間近(060)(図-14)
⚫ 宇宙軍、レイセオン社にGPS地上管制システム追加作業で1億9,670万ドルを発注(082)
⚫ AFRLのSPX-31でのSPIRRAL打上げ(084)
⚫ SpaceRISE社が欧州委員会より多軌道衛星コンステレーション「IRIS2」の構築・運用担当に採択(003)
⚫ ONERA、ThrustMe社及びAirbus Defence & Space社がヨウ素燃料の衛星用電気推進を調査(013)(図-4)
⚫ 衛星情報化を目指す地上軌道間の取り組み(031)(図-9)
⚫ Sierra Space社が軍事衛星の設計審査を通過(033)(図-10)
⚫ 宇宙軍がOpTech社から450万ドルの光学センサーを調達(052)
⚫ Lockheed Martin社がIceye社と提携してAI 対応推進(061)
⚫ Astranis社がXona Space社と提携し米軍GPSバックアップを担当(002)
⚫ Phase4社がモノプロペラントマルチモード推進システム発表(011)(図-3)
⚫ アヴヌ社はHEOで機内Wi-Fiのアップグレード追求(015)
⚫ Viasat社は、Starlinkとの競争でTelesat LEO運用能力増強を追求(020)(図-6)
⚫ Maxar Intelligence社がセンサー事業をARKA Group社に売却(022)
⚫ Rheinmetall社とICEYE社がウクライナに衛星画像を提供(034)
⚫ Starfish Space社はOtter開発のために数百万ドルの資金を確保(036)
⚫ AST SpaceMobile社は衛星打上げをBlue Origin社に依存(045)
⚫ Impulse Space社がFalcon 9で3回打上げ予定(047)
⚫ Eaton社の高性能推進剤タンクがMDA AURORA に採用(053)
⚫ ケプラー社は光通信に注力(056)
⚫ EnduroSat社が100基の衛星推進システムをEnpulsionに発注(047)
【打上】⚫ 中国人搭乗の新月ロケットが2026年に打上げられる予定(017)(図-5)
⚫ 次のアリアン6の打上げは2025年初頭にずれ込む(023)(図-7)
⚫ 長征2Cは、4つのPIESAT-2商用レーダー衛星を打上げへ(026)
⚫ 中国が完全再使用可能なスターシップ型ロケットのコンセプトを発表(040)(図-11)
⚫ 中国が有人月ロケットのフェアリング分離試験を実施(058)
⚫ 宇宙軍は、バルカンロケットの打上げが2025年にずれ込むための調整(067)(図-15)
⚫ ベガCの打ち上げ再開は一日スリップ(080)(図-25)
⚫ Rocket Lab社は、新しい中型ロケットで国防総省の打上げ契約に入札することを公表(009)(図-2)
⚫ Falcon 9がISSへドラゴン貨物機を打上げ(014)
⚫ ABL Space社が商業打上げ市場から撤退し、ミサイル防衛に焦点を移す(048)
⚫ 宇宙軍司令官がスターシップのテスト打上げを視察、軍事使用に関心(062)
⚫ NASAがBlue Origin社とSpaceX社に月面貨物配送契約を発注(070)(図-16)
⚫ 中国のスタートアップ企業Cosmoleap社が箸回収システムを搭載したロケットの資金を獲得(001)(図-1)
⚫ ギルモア・スペース社がエリスの打上げを承認(012)
⚫ ヴァージン・ギャラクティック社はスペースプレーンを加速するための資金調達(018)
⚫ Sierra Space社は社内でのミッションコントロールによりスペースプレーン運用を(021)
⚫ 英国のスペースプレーンの開発会社Reaction Engines社が倒産(025)(図-8)
⚫ 中国の商業用Lijian-1ロケットが15機の衛星を打上げ(027)
⚫ 消耗品削減するロケット再利用に未来を賭けるロケット会社が増加中(028)
⚫ Rocket Lab社が2024年第3四半期の決算を発表(035)
⚫ Rocket Lab社がNeutronロケットの打上げ顧客として最初の契約を締結(042)
⚫ Shotwell氏はStarshipがSpaceXの最も価値のある事業になると予想(049)
⚫ ドーン・エアロスペース社が音速の壁を破る世界記録達成(054)
⚫ スペースX社は6機目のスターシップを打上げるが、ブースター着陸は中止(057)(図-13)
⚫ ラティチュード社、アトモス・スペース・カーゴ社と複数回打上げ契約を締結(059)
⚫ Exolaunch社は2026年に新ユニバーサルアダプターで衛星放出事業を展開(063)
⚫ Space Transportation of China社は2025年にプロトタイプスペースプレーンの飛行試験を(066)
⚫ Blue Origin社が9回目の有人ニューシェパード弾道ミッションを実施(069)
⚫ ロケットラボ社、エレクトロンの派生ロケット「HASTE」を打上げへ(071)
⚫ Rocket Lab社が24時間以内に2回エレクトロンを打上げる(073)(図-17)
【その他】⚫ NASAがアルテミス3ミッションの着陸候補地を9カ所発表(005)
⚫ NASAは次期政権で有人宇宙飛行プログラムの継続性を求める(008)
⚫ 中国有人宇宙船「神舟18号」が地球帰還192日間宇宙滞在終了(019)
⚫ NASAがISS貨物契約を2030年まで延長(024)
⚫ JAXA観測ロケットでデトネーションエンジンの宇宙空間作動実験成功(039)
⚫ 天舟8号宇宙船が天宮宇宙ステーションに物資と実験装置を届ける(046)
⚫ 中国は、軌道上で最初のインフレータブル宇宙モジュールのテスト実施(068)
⚫ ISSの乗組員がロシアのプログレス貨物宇宙船からの異臭を報告(072)
⚫ NASAがDragonflyミッション打上げにFalcon Heavyを選定(076)
⚫ ミレニアムスペース社はNASAミッション宇宙船を納入(030)
⚫ NASAがCLPS月着陸船でのVIPERの影響を説明(077)
⚫ VERITAS社の金星ミッションは遅延を回避検討中(079)
⚫ Intuitive Machines社はArtemisのインフラストラクチャファーストの受注を(044)
⚫ Lunar Outpost社が月面探査車を輸送するためにStarshipを選択(065)
⚫ Firefly社は最初の月着陸船ミッションの1月の打ち上げ日を設定(075)(図-18)
【国内】⚫ JAXA、H3ロケット4号機打上げ成功(007) (図-19)
⚫ 日本とポーランドが米軍衛星ネットワークに参加(016)
⚫ ESAとJAXAが深宇宙協力の拡大に関する声明に署名(064)(図-22)
⚫ JAXAイプシロンS第2段ロケットの地上燃焼試験で異常発生(078)(図-23)
⚫ 三菱電機が準天頂衛星システム「みちびき」6号機を公開(083) (図-24)
⚫ ブリヂストン社がAstrobotic社と提携して月面車用タイヤを開発へ(004)
⚫ ソニー社、レーザー通信ミッション試験用衛星2機を発注(032)
⚫ スペースワン社、「カイロス」2号機の打上げ予定は12月(037)(図-20)
⚫ Ispace社「HAKUTO-R」ミッション2の月着陸船は2025年1月に打上げへ(038)(図-21)
⚫ GITAI社が軌道上ロボットの開発資金を調達(041)
⚫ アストロスケール社、OneWeb軌道離脱ミッションの設計審査に着手(081)