海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2024年08月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳

論説:Small Satellite Conference Utahについて(村上)

38回目を迎えたSmall Satellite ConferenceがLogan Utahで開催された。Small Satelliteをテーマにしたコンファレンスが38年前から毎年開催されて来た。Cubsatの仕様が標準化されたのが1999年であった。その10年以上前かSmall Satelliteのコンファレンスが開催されて来ていたことを知って改めて驚いた。近年はSmall Satelliteが実用にも供される様になって来ており、有用性が軍や商業オペレータでも認識されており、積極的に採用に向けて動いており、小型衛星が拡大して行くことについては何の疑問も感じなくなって来ている。小型衛星の代表的なコンファレンスに多数参加されるのも理解できる。
他の衛星コンファレンスの参加者数と比較して小型衛星に特化したコンファレンスにしては規模が大きいと感じている。毎年Washingtonで開催されている最も代表的な衛星のコンファレンスであるSatellite Conferenceが15,000人、弊社が実施しているもう一つの衛星コンファレンスであるWorld Space Business Weekが1,000人強の参加者であり、それらと比較して約4,000人の人が参加しているのは驚かされてしまう。小型衛星は性格的に大学の教育用や技術獲得の為に開発されている面があり、大学関係者の参加が参加者の半分程度を占めており参加者の多さに繋がっている面はある。大学関係者は米軍やNASAから資金的支援を受けて新規技術の開発を行っており、このコンファレンスに参加することは大学に取っても学生に取っても意義があると感じていると関係者は述べていた。

Small Satellite Conferenceにおいては幾つかの注目すべき、動きや報告があった。
Small Satellite Conferenceは、38年前に開始されて来て以降、Utah大学のメインキャンパスのあるLoganにて開催されて来た。大学発祥のコンファレンスと言うこともあり、参加費も安くアットホームな雰囲気を維持して来た。技術開発状況を隠すことなく報告し、悩みを共有し、小型衛星の発展に繋げたいとの精神が主催者だけでなく、参加者にも共有されていた。昼食も野外で開放的な雰囲気の中で行われ、アイスクリームパーティーも行われて極力敷居を低くして宇宙開発を楽しんで欲しいとの意図を感じていた。
来年からは、Salt Lake City市内で開催されることになった。会場変更の最大の理由はLoganの宿泊施設の収容能力が1,000名しかなく、4,000名を収容することは不可能で多くの人が車で会場まで通わなければいけない点であるとのことであった。小型衛星がある意味メインになって来た今日において過去の郷愁に何時までも浸っていることが出来なくなってしまったと言うことか。
コンファレンスが商業化への道を歩んでいることは事実であるが、小型衛星はアカデミアの果たす役割が大きいことを考えると大学主体のイベントして残す工夫は出来ないものかと感じている。
例えば、Loganでも学生主体のイベントとか何らかのイベントは継続して欲しいなと願っている。

小型衛星の動向についてNOVASPACEから方向を行った。
NOVASPACEでは、小型衛星の動向について分析したレポート「Prospects for the Small Satellite Market」を過去9年間毎年発行して来ている。コンファレンスの機会を使って概要の報告をNOAVASPACEの担当から行った。
今後10年間の小型衛星の打上げ機数を14,500機と変更した。1年前に予測した23,000機より大幅に減少した。大幅な減少の理由は小型衛星の打上げの大きな割合を占めていたStarlink衛星の質量が800-1,250㎏になる見込みであり、小型衛星の範疇から外れることが大きい。
Space-Xはビジネスの観点で高性能化を図ることが必要と考えており、小型化を追求するよりも性能を重視する方針への変更を図ったとSpace-Xからは聞いている。
メガコンステを除いた小型衛星は堅調に増加する見込みで特に200㎏サイズの衛星が増加すると見ている。ただ、小型衛星の8割程度はStarlink以外のメガコンステが占めている。
小型衛星メーカは、小型衛星のブームに乗ろうと設備増強を行っているが、需要より供給の方が上回ってきており、供給過多になって来ていると見ている。部品に関しては依然として一部は納期遅れを起こしており、品質・価格・納期のバランスは崩れた状況が暫く続くと見ている。SDAプログラムでは光ターミナルの製造遅れが懸念されつつある。

Aerospace CorporationのIsakowitz CEO のKeyNote Speechは、冒頭で、「Star trek Beyond」にて、小型衛星群が攻撃に参加するビデオを流した。小型衛星群が誕生する時代は直ぐ来るし、皆が参加することによりこうした未来は近い将来到来すると報告していた。
そもそもStarlinkが発表された10年前でさえ、誰も小型衛星がビジネスとして成り立つとは思っていかなった訳で、Space-Xはこれを打ち破った。小型衛星を開発する起業家や革新を継続して、リスクを厭わない姿勢は、拡大への道を歩んで行くと確信していると話していた。

Aerospace Corporationはシンクタンク的な業務を多数行っている一方で小型衛星開発の実施や支援を積極的に行っており、今回KeyNoteを引き受けた背景は、コンファレンスの場所が変わろうとも小型衛星の精神は受け継いで行くとのメッセージを送りたかったのではと感じている。

NRO(National Reconnaissance Office)の長官Dr.Scoleseからのビデオメッセージがあった。NROとしては、様々な画像に対する要求が政府内であり、NROとして改革が必要と感じており、その役割を小型衛星の発展に期待しており、デジタル化の時代にもっと良く、スマートに早く動く必要があると述べていた。商業との連携がスムーズに行っていない点もあり改善が必要と考えていると話していた。小型衛星の会社の発展と高度のデータ取得とタイムリーなデータ入手がNROとして必要と考えていると話していた。

論文で関心を持ったのは、通信オペレータのViasatが発表していた複数衛星のオーケストレーションのコンセプトの発表であった。オーケストレーションについては、ソフトウエアの会社や地上局のコンセプトやソフトの提案が多数行われて来ている中で、オペレータまでもオーケストレーションの開発を行っていることに驚かされた。小型衛星が軌道上に多数配置され、中軌道衛星と静止衛星の連携を効率よく確実に取ることが求められる中でついにコンセプト検討まで行う企業が現れるとは流石と感じざるを得なかった。


WSBWは、今年からWorld Satellite Business Week → World Space Business Weekにブランド名を進化。
  1. 宇宙ビジネス関連各社(衛星事業者、衛星製造会社、打上げ事業者、金融業者など)のトップクラスの方々が集まるコンファレンス。
  2. 開催日 / 場所:2024年9月16日-20日 / WESTINホテル・パリ

《昨年開催のWSBW2023の主要指標》

SDSS(宇宙防衛・安全保障サミット)は、フランスの防衛・軍事団体と提携して、第一回サミットを初めて開催。
  1. 防衛、安全保障、宇宙産業におけるグローバル・リーダーが一堂に会する重要なイベント(WSBWとの相乗効果の実現)。
  2. 開催日 / 場所:2024年9月17日-18日 / Automobile Club de France(フランス自動車クラブ)・パリ

本サミットは、国際的な防衛・軍事団体の協力と支援により開発され、防衛、安全保障、宇宙分野の世界的リーダーが一堂に集まる極めて重要なプラットフォーム。
→ SDSSに参加する防衛関係者にとって、潜在的なパートナー、イノベーター、サービスプロバイダー、投資家との理想的な交流の機会。

《プログラム概要(招待講演者、トピックス)》

Invited speakers

  • Space Commands and military agencies
    (US, France, Spain, Germany, Korea, UK, Japan, Saudi Arabia, Oman, …)
  • Space agencies and research centers
  • International organizations and alliances
    NATO, European Defense Agency (EDA), European Union Satellite Centre (SatCen), European Union Agency for the Space Programme (EUSPA)…

Explore Topics Surrounding

  • Space defense strategies
  • Related activities & partnerships
  • Space surveillance & operations monitoring
  • Space assets operations & protection
  • New capabilities development & challenges for defense actors
  • Innovation & adaptation to military needs
  • Role & relationships with the industrial ecosystem
  • Focus sessions: Connectivity, remote sensing

《最近のWSBWへの防衛関係参加者》

  • French Space Command (CdE)
  • National Space Council (US)
  • NATO Communications and Information Agency
  • Korean Agency for Defense Development (ADD)
  • Directorate General of the Armament (F-DGA)
  • European Defence Agency (EDA)
  • EuropeanUnion Satellite Centre (SatCen)
  • Ministry of Armed Forces(F)United States Air Force (USAF)
  • United States Space Force (USSF)
  • Defense Acquisition Program Administration (DAPA)
  • Ministry of Defence(Spain)
  • Canada Department of National Defence
  • Chilean Air Force, …

《キーハイライト》


2024年8月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【Established Space及び他トピックス】【Hybrid Space】【Emerging Space】
【衛星】■ ノースロップ・グラマン社、SDAの最新増殖型データ伝送衛星のPDRを完了(006)
■ 宇宙軍が強靭な通信のための「スモールGEO」オプションを探る(013) (図-3)
■ ViaSat-3 F1衛星が商⽤サービスを開始(017)
■ 中国がサウザンドセイルズメガコンステレーションの最初の衛星打上げ(018)
■ Safran社が⽶国に電動スラスター⽣産ラインを開設(019)
■ ⼩型衛星の重量増加により⼩型衛星市場予測が減少(024)
■ 中国のメガコンステレーションの打上げがスペースデブリを多数発⽣させる(025)
■ 宇宙軍、中軌道におけるミサイル防衛衛星ネットワークを拡⼤(028)
■ NASAがOSAM-1衛星サービスミッションの再構築計画を評価(044)(図-12)
■ NASAが⼩型衛星ミッションの打上げサービス契約に3社を追加(063)(図-15)
■ 最⾼裁判所の訴訟は、軌道デブリの軽減ルールに影響を与える可能性あり(066)
■ 宇宙軍がノースロップ・グラマン社に英国レーダー基地の2億ドル契約を発注(068)
■ 宇宙天気:政策ではなく優先順位付けが⽶国のレジリエンスに⽋ける(073)
■ ⽶軍の宇宙領域認識は期待に遅れをとる(074)
■ NASAは、LEO微⼩重⼒戦略に関する⼀般のコメントを募集中(077)
■ 点と点をつなぐ:宇宙爆発の回避(002)
■ USSFはOrbit Fab社のRAFTIを軍事衛星の燃料補給インターフェースとして認可(016)(図-5)
■ Firefly社がL3Harris社と多数回打上げ契約締結(023)(図-6)
■ ロッキード・マーティン社がテラン・オービタル社を買収へ(046)
■ テラン・オービタル社とヨーク・スペース社が⽶軍衛星契約を受注(049)
■ FCCがStarlinkの第1世代アップグレード計画を認可(058)
■ Space Norway社が北極域通信衛星を軌道投⼊、アメリカ宇宙軍のペイロードも搭載(059)
■ DAWN社は、ドッキングと燃料補給ポートを公表(004)
■ AST SpaceMobile社がスマートフォン衛星「BlueBird」運⽤を許可(011)
■ Benchmark社がパートナーネットワークにスターライトスラスターを追加(014)(図-4)
■ インパルススペース社がGEOライドシェアプログラムを発表(020)
■ Rocket Lab社がアルキメデスエンジンを初燃焼試験実施(027)(図-7)
■ Apex社はAries衛星バスのGEOバージョンを提供(045)
■ ポーランド企業が衛星燃料補給技術の開発で協⼒(047)(図-13)
■ HawkEye 360のCluster 10衛星が打上げられ、全球的なRF監視強化(051)
■ 2025年初販売に向けて取組むOrbex社(052)
■ SpaceXでPlanet社が1st Tanager-1(ハイパースペクトル衛星)と36機のSuperDovesを打上げ(053)
■ ブルーキャニオン社はスペースXトランスポーター-11ミッションを通じて⼩型衛星を打上げへ(055)
■ 実⾏可能なスペースプレーンでvLEO SDAセンサーを⾶ばすスカウトスペース社(064)
■ Creotech社がEagleEyeを販売(071)
【打上】■ ULA、USSF-51打上げ成功Atlas Vのアメリカ宇宙軍衛星打上げ最後(032)(図-9)
■ ロッキード・マーティン社がGD社を買収、固体ロケットモーター製造を開始(041)
■ インドの固体SSLVロケットが地球観測衛星を打上げ(048)
■ ⻑征4号Bが実験的なヤオガン43号衛星群を打上げ(050)
■ Rocket Lab社は前回のミッションから8⽇後にCapellaのAcadia-3 SAR衛星を打上げる予定(031)
■ Rocket Lab社がCapella Space SAR衛星を打上げ(033)
■ SpaceX社が北極圏ブロードバンドミッションに2つの衛星を打上げ(034)
■ Deep Blue Aerospace社が画期的なVTVLロケット試験を実施(040)
■ RFA第1段が静⽌燃焼試験で爆発(057)
■ RFA社は発射台爆発のため初⾶⾏を2025年に延期(067)(図-16)
■ エンジン燃料漏れによる⽕災でABLスペースシステムズ社ロケットが爆発(076)(図-17)
■ Blue Origin社は⽊曜⽇に観光ミッションの打上げ予定(083)
■ ファルコン9ブースターが着陸失敗で焼失(085)
■ ギャラクティック・エナジー社、6機衛星打上げ、3回⽬の海上打上げ(087)
■ Blue Origin社のNS-26ミッションは「最もクリーンな⾶⾏」(090)(図-18)
【その他】■ ボーイングはスターライナーで1億2500万ドルの損失を被る(001)
■ NASA、⽉着陸船ミッション契約を間もなく再開へ(007)(図-2)
■ NASAは、⽉⾯⾞「アルテミス」1台の開発計画を継続(008)
■ ESA⽊星氷衛星探査機「Juice」が⽉と地球でのスイングバイまであと2週間(026)
■ NASAの監視機関がボーイングSLS作業の品質管理問題を発⾒(035)
■ 惑星探査に持続可能性を取り⼊れる必要がある(036)
■ 中国は地政学的リスク軽減のために地球と⽉間通信⽤⼆重中継衛星開発(043)
■ ロシア、ISSへの補給船「プログレスMS-28」打上げ成功(054)
■ SLSの契約延⻑は、アルテミス計画のさらなる遅延を⽰唆(061)
■ 中国、2028年に太陽系外惑星観測所「アース2.0」を打上げへ(062)
■ ESA⽊星氷衛星探査機「Juice」が⽉と地球でスイングバイ実施(069)
■ スターライナー、宇宙⾶⾏⼠を乗せずにISSから帰還(070)
■ ペレグリン⽉着陸船の故障はバルブの問題か(080)
■ 最近のISSミッションには、⽣物医学および物理科学の研究が含まれる(081)
■ NASAとボーイング社は将来のSLSステージ⽣産のために⾞両組⽴を最適化(082)
■ エアロックテスト成功でロッキード・マーティンはインフレータブル宇宙構造物に投資(084)
■ ISSからのスターライナー帰還は9⽉6⽇に決定(089)
■ NASAがスターライナーの宇宙⾶⾏⼠をクルードラゴンで帰国させることを検討(022)
■ Cygnus補給船「NG-21」ISSにドッキング成功⽇本の超⼩型衛星も搭載(030)
■ NASAのペイロードがBlue Origin社初⽉着陸船ミッションで⾶⾏(037)(図-10)
■ Intuitive Machines社はNASAの⽉⾯⾞VIPER引き継ぎを⽬指す(039)
■ Axiom Space社、4回⽬の商業有⼈宇宙ミッションを実施予定ISROのクルーもISSへ(065)
■ SpaceXポラリスプログラムの⽕曜⽇の打上げは、有⼈宇宙⾶⾏能⼒を急速に進歩させる最初の取組(072)
■ Firefly Aerospace社⽉着陸船が打上げ前環境試験を開始(075)
■ NASAが南極⽉⾯着陸船ミッションにIntuitive Machines社を選定(088)
■ Vast社はHaven-1ステーションに微⼩重⼒実験室提供(003)(図-1)
■ Intuitive Machines社とSEOPS社が⽉⾯ライドシェア提携(010)
■ Intuitive Machines社、「IM-2」の着陸地点を最終決定⽇本の⽉探査ローバーも搭載(021)
■ ⺠間初船外活動実施⽬指すミッション「ポラリス・ドーン」8⽉26⽇打上げへ(029)(図-8)
■ ClearSpace社とPlextek社のパートナーシップで軌道上サービス開発(042)(図-11)
■ Rocket Lab社が製造した⽕星⼩型衛星が発射場到着(056)(図-14)
【国内】■ 宇宙領域認識における⽇本の役割拡⼤(005)(図-19)
■ JAXA⼤⻄卓哉宇宙⾶⾏⼠が2025年2⽉以降にISS⻑期滞在へNASA「Crew-10」ミッションに割り当て(009)
■ JAXA⽉探査機「SLIM」⽉⾯での運⽤を終了(079)(図-23)
■ JAXA、防衛省の衛星を搭載する「H3」ロケット4号機の打上げ予定⽇を発表(086)(図-24)
■ エアバス社とアストロスケール社が軌道上サービスパートナーシップ拡⼤(038)(図-22)
■ スペースワン社「カイロス」初号機⾶⾏中断の原因公表2号機は2024年12⽉にも打上げへ(078)
■ インターステラー社、ロケットと衛星の開発に2,100万ドルを調達(012)(図-20)
■ Synspective社のSAR衛星5機⽬が⽬標軌道に到達(015)(図-21)
■ アストロスケール社、⽇本のデブリ撤去ミッションの契約を締結(060)