海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース
2025年8月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク
編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳
論説:Small Satellite Conference(村上)
小型衛星の代表的なコンファレンスであるSmall Satellite Conferenceが8月10日から13日Salt Lake Cityで開催された。
基調講演としてはNASA科学担当次長から話があり、これから益々小型衛星の役割が増して来る。小型衛星を使ってミッションを遂行することに尽力したいと話していた。予算が厳しく大型衛星を作ることが出来なくなりつつあり、小型衛星にシフトせざるを得ないからこの様な発言になったと思う。昨日まで大型衛星の必要性を説いて計画を促進していた人が突然小型衛星の役割が増して来ましたと言われても小型衛星で出来るのであれば最初から何故しなかったのかと言いたくなってしまった。
ノルウェーの会社Kongsbergは小型衛星を活用した防衛ビジネスを政府と連携して展開したいと 話していた。Kongsbergはリトアニアの小型衛星メーカ(NanoAvionics)を買収して宇宙事業の中でも小型衛星のビジネスを積極的に展開している。ノルウェーの様な大国ではない国が衛星システムを持つ場合、大型衛星を持つよりも小型衛星の方が初期導入としてはハードルが下げられるし、将来改善を図る上でも小型衛星の方が小回りが利いて良いと感じた。
衛星の自律性をどの様に持たせるべきかのパネルもあった。運用管理を削減する為に衛星に自律性を持たせることについては異論がないところである。衝突回避の様な自律化に適したテーマについては適した事項である。一方で、自律化が極端に進むと衛星オペレータのプロや衛星データ分析が出来る人がいなくなり、技術者育成の観点からは問題になる可能性がるとの指摘もあった。自律化が遅れている宇宙は先ずは大胆に自律化を推進し、出て来る問題があったら都度対応して行く位にしないととても普及できないと感じている。
Space-XのライドシェアやImpulse Spaceが行っている相乗りミッションは、引き続き活況を呈しているそうである。小型ロケットのデビューが軒並み遅れていることがこの要因にあるとのことであった。 小型ロケットはこれ以上デビューが遅れると顧客が逃げてロケットが出来た時には打上げる衛星が無くなると言うことになってしまうと感じた。
コンファレンスの期間中、日本の推進系を専門とするPale BlueがラウンドCの融資を決定したとの報道を聞いた。日本を代表する衛星メーカである三菱電機も参加しているとのことであった。
三菱電機はAstroscaleにも出資している。米国ではLockheed Martinがスタートアップに積極的に投資したり、小型衛星企業を買収して事業を拡げている。日本でもこの様な動きが出て来たことは喜ばしいことだと感じている。
小型衛星の会議に出席して活況を呈している状況を見れば見るほど大型衛星も頑張れよと思ってしまった。政府衛星だけでなく防衛衛星も小型衛星の活用が行われている。
以前の様な大型衛星はどうかと思うがStarlinkが1.2tonにもなっている状況を見ると機能を精査して必要なものは必要と言う勇気も持って欲しいと感じた。
NOVASPACE主催イベントWSBW及びSDSSのご案内
NOVASPACEとしては旧Euroconsultの時から長年Parisの中央に位置する歴史あるWESTIN Hotelでイベントを開催して来ましたが、WESTIN Hotelの改修に伴い、日本大使館に近い、Hotel du Collectionneurで開催することになりました。今年も多数の方に参加頂きたいと思っています。
- WSBW(World Space Business Week)
- 宇宙ビジネス関連各社(衛星事業者、衛星製造会社、打上げ事業者、金融業者など)のトップクラスの方々が集まるコンファレンス。
- 開催日/場所:2025年9月15日-19日/ Hotel du Collectionneur ・パリ
- SDSS(宇宙防衛・安全保障サミット)
- 防衛、安全保障、宇宙産業におけるグローバル・リーダーが会するイベント。昨年に続いて第2回目の開催。
- 開催日/場所:2025年9月16日-17日/ Les Salons Hoche・パリ
SDSS(宇宙防衛・安全保障サミット):
本サミットは、国際的な防衛・軍事団体の協力と支援により開発され、防衛、安全保障、宇宙分野の世界的リーダーが集まるプラットフォーム。IRIS2と政府衛星網との連携についてもデスカッション予定。
《プログラム概要》
- Space Commands’ Leaders: Navigating a Rapidly Evolving Space Domain
- International Cooperation: Shaping the Future of Space Security Frameworks
- Strategic Perspectives from Defense and Armament Agencies
- Novaspace’s Strategic Views
- Space Surveillance soon facing a 50,000+ objects’ environment
- Space as a Modernization and Augmentation Asset for Military Force
- Space Agencies’ Contribution to the Security Equation
- IRIS² and Institutional Perspectives: The Future of Secure Government Satcom
- From Innovation to Operations: Enabling the Transformation of Defense Capabilities
- Building Next-Generation Military and Secure Space Systems
- Satcom Constellations: Unlocking New Capabilities for Military Communications
- Geospatial Intelligence: Next Frontiers and Challenges for GEOINT
- Enhancing Mission and Cyber Security
- Integrating Space-Based Capabilities into Military Platforms

2025年8月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス
【民間宇宙トピックス】 | 【防衛宇宙トピックス】 | 【その他】 | |
【衛星】![]() | ■EUTELSAT社のLEO衛星の明るい見通しは曇り気味(013) ■RTX社のBlue Canyon Technologies社が新しい大型宇宙船を発表(026) ■NASAは軌道衝突回避のためのLeoLabs社のデータを評価(036) ■ICEYE社はスキャンワイドモード打上げによりSARイメージング機能拡張(040) ■カイパーコンステレーション衛星群は100機以上の衛星に成長(041) ■Impulse Space社はGEOライドシェアプログラムに対する強い需要を表明(046) (図-15) ■通信運用会社資金は宇宙の新時代に資金を提供する(060) ■Globalstar社は安全な衛星通信サービスで防衛市場を追求(061) ■サマラ・エアロスペース社は画期的な宇宙船の姿勢制御技術を発展させるNASA SBIRフェーズI契約を受注(062) ■Intuition-1衛星は軌道から世界を取り込んだ(076) | ■EchoStar社が50億ドルのLEOコンステレーションで最初のMDA衛星を発注(002) ■アルベド社はNROとステージII契約を締結(006) ■宇宙軍司令官は軌道上燃料補給スタンド建設を呼びかける(015) ■DoD主管SATCOM計画を進化させるために必要なものは(020) (図-7) ■米宇宙軍のL3ハリス製造NTS-3衛星が打上げられる(042)(図-13) ■プーチン大統領は衛星艦隊の規模を拡大したいと考えている(057) ■ヨーク・スペース社は米軍ネットワーク構築のために21基の衛星を納入(079)(図-22) ■DeepSat社が超低軌道監視のAFWERX契約を獲得(080) ■XTAR社は次世代衛星で米国の防衛市場拡大を視野に入れる(082)(図-24) | ■欧州企業は宇宙事業の統合に向けて引き続き交渉中(010) ■中国Geespace社が11基衛星の洋上から打上げ成功(034) ■ThrustMe社、Marble社、Reflex社がヨウ素を燃料とするホールスラスターをテスト (044)(図-14) ■中国が新低傾斜角衛星Guowangブロードバンドを打上げ(052) ■衛星は現実世界で脅威に直面している(054) ■小型GEO衛星は大きな衝撃になっている(072) ■太陽光発電装置のボトルネックを解消(084) |
【打上】![]() | ■ブルーオリジン社は仮想通貨起業家他5人が搭乗する14回目のニューシェパードの有人フライトを実施(005) ■ヴァージン・ギャラクティック社は商用宇宙機サービス開始スケジュール延期(023) ■ロケットラボ社は2025年に初のニュートロンロケットの打上げに「ゴーサイン」(031) ■中国は月面ロケットの7基エンジンクラスタの地上燃焼試験を実施(048)(図-16) ■スペースX社は10回目のスターシップ機の試験飛行を許可される(049) ■米FAAのインフォームド・コンセント規則により宇宙観光者は飛行に盲目(065) ■スペースX社は「スターシップ」の10回目の飛行試験を8月27日に実施(066) ■スターシップが10回目の試験飛行を完了し、一連の失敗を断ち切る(083)(図-25) ■Avio社とIsar Aerospace社がヨーロッパ「フライトチケット」賞を受賞(085) | ■Vaya Space社は極超音速エンジン開発推進のAFWERX契約に選定(007)(図-3) ■ULA社は8月12日に国家安全保障衛星をバルカンロケット打上げ予定(017) ■ULA社のバルカンロケットが初の国家安全保障ミッション打上げ実施(037)(図-11) | ■米国の回復力ある宇宙のために内陸部衛星打上げを開始(001) (図-1) ■中国のロケット打上げスタートアップが自律型ロケット回収船を発表(035)(図-10) ■中国の打上げスタートアップ企業ランドスペース社朱雀2号が打上げ失敗(047) ■スペースXが次世代スーパーヘビー用グリッドフィン公開(059)(図-17) ■ULA社がVulcanロケットの再利用化に対して取り組む(068) ■中国の宇宙への野望を実現に新たなロケット計画が登場(070) ■Rocket Lab社は非公開民間顧客向け5基衛星打上げ(075) ■中国はロケットの着陸と再利用の準備を進めている(078) ■ロケットラボ社がニュートロンロケット発射台を開設(087) |
【その他】![]() | ■ロスコスモス社はNASAが無視したリーダー間の会合を祝う(003) ■人間から火星へ、それとも人間が火星を探査するのか?(008) ■NASAが月面トレイルブレイザーミッションを中止(009) ■NASAの予算案は有人による火星探査を視野に入れている(018) ■NASAは商業宇宙ステーション開発計画を修正(019) ■Impulse Space社がMIRAビークルをアップグレードする(022) ■Firefly社は月の南極点へのミッションに対してNASAから契約を受注(024) ■米国は最初に月に到達するが、競争に負ける可能性がある(027) ■投資家が火星のフロンティアに賭ける理由は何か(030) ■Intutive Machine社は独自の月通信衛星を開発する(032) ■サフランDSI社は小惑星ミッションに電気推進システムを供給(033) ■DAWN社がオービット・ガード#3ミッションに推進装置を提供(038) ■ブルーオリジン社の火星通信オービターミッション(039)(図-12) ■NASAがOTV研究を実施する6社を選定(043) ■ブルーオリジン社が火星通信オービターのコンセプトを提供(051) ■アジャイル・スペース・インダストリーズ社がエクスプロレーション社のISSへのニックス・ミッションに推進装置を提供(058) ■ダッフィー氏がNASAの地球科学の将来に疑問のコメント(064) ■アルテミス2号搭載キューブサットを軌道上昇させる水蒸気推進機(067) ■NASAには大胆なリーダーシップが必要(071) ■カーゴドラゴンがISSの再加速を実証(074) ■サフランDSI社は小惑星ヴェストリ・ミッションに電気推進システム供給(081)(図-23) | ■ゴールデンドームの最大の課題はミサイルではなく、データ処理だと言う理由(004)(図-2) ■ロッキード・マーティン社は宇宙空間でのミサイル迎撃を2028年にデモを 目標とする(011)(図-4) ■ゴールデンドームにはこれまでと異なる考え方とアジャイルアプローチが必要(014)(図-6) ■ノースロップ・グラマン社はゴールデンドームミ需要の高まりに投資を呼びかけ(016) ■Telesat社はLightspeedに対するゴールデンドームの機会に注目(021) ■シュリーバー・ウォーゲーム計画は米国が連合主導の宇宙戦略に移行する中、同盟国に大きな役割が与えられる(056) ■米宇宙軍のX-37Bミッション8の打上げが準備中(063)(図-18) ■L3Harris社はアメリカのゴールデンドーム計画を支援でフロリダの施設を拡張(077) | ■中国が有人月着陸機の着陸試験を完了(028)(図-8) ■月面原子炉開発を加速するNASA計画を産業界は支持(029)(図-9) ■米国FAAは宇宙輸送諮問委員会メンバーを解任(050) ■オールドスペースとニュースペースとの関係は(053) ■英国宇宙機関が英国政府に吸収される(069) ■ホワイトハウスはNASAの労働組合の廃止に動く(086) ■アメリカの宇宙覇権のための経済戦略(088) |
【国内】![]() | ■ロケットラボ社はQPS研究所の小型SAR衛星「クシナダ-I」を打上げ(012)(図-5) ■IST社がトヨタ自動車株式会社関係会社Wovenと提携契約を締結(025)(図-19) ■Pale Blue社が三菱電機と提携し水推進系を開発(045) ■Firefly社は日本からのアルファロケット打上げを検討する契約に署名(055)(図-20) ■JAXAは「HTV-X」を搭載する「H3」ロケット7号機の打上げ予定日を発表(073) (図-21) |