海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース
2024年12月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク
編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳
論説:宇宙開発を取り巻く状況について(村上)
2025年を迎えるにあたって2024年を振り返って見た。
2024年で最も衝撃的な出来事と言えば能登半島地震ではないだろうか。元旦に発生したのと被害が想像したよりも遥かに大きく驚かされた。能登半島は険しい山道が多く、道路の遮断や電気、水道のライフラインが破壊されて多くの方が孤立された状態で何日も過ごさざるを得ない状況に置かれた。通信の確保にStarlinkが活用されたり、状況把握に「だいち2号」を始めとする地球観測衛星が活用された。半島と言う立地条件が悪い場所で宇宙のインフラを活用してお役に立てたことは良かったと思っている。一方で、道路の遮断の状況把握やライフラインの状況確認に宇宙の情報がタイムリーに利用出来たかと言えばまだまだ改善が必要と言わざるええないと感じている。
正直能登と言う地形を考えると宇宙システムが貢献できる最大のチャンスであったと考えている。
個々には各機関が努力頂いて貢献していたことは否定しないし、かなり宇宙システムを活用頂いたことは良かったと思う反面改善出来る点は多々あったのではと思う点も多い。
衛星データを提供したと言っても現場では活用が限定的であった。Home Pageに画像を載せたり、各省に届けても現場での活用は必ずしも進んでいない。組織的な動きもまだまだと感じている。
そもそも政府の対策会議では文章を読んでいるだけで状況を映像で確認することもなされていない。また政府と民間事業者との連携には改善の余地があると感じている。
日本は災害が多い国であることは言うまでもない。災害が起こった時にどの様に対応して行くか宇宙インフラを含めて効率的に対応出来るかもう1度見直す機会として捕らまえる必要があると感じている。
世界に目を向けるとウクライナ戦争が続いているし、イスラエルとパレスチナの戦争も続いている。
戦争は望ましいことではないのは言うまでもないことであるものの戦いの特長の一つに宇宙の利用が格段に進んだことが上げられる。
10年前のイランでの戦争やアフガンでの戦いでも宇宙インフラが活用されていたが、現在は戦争のオペレーションに宇宙データが使われる様になり、商業衛星のデータの活用も各段に進んで来ている。
ウクライナは1機も衛星を持っていないし、ロシアでさえも自国の衛星だけでは十分対応出来ず、中国からの間接的な支援を受けている。更に今回の戦争で象徴的なのは宇宙の商業システムが戦闘の作戦に使われつつある点である。Starlinkをウクライナが作戦に使用していることを聞いたElon Muskがこれは戦争に使う為に供与した訳ではないと言ってサービスの制限をかけた。
戦時においては使えるものは何でも使うのはあたり前の話と思うが、衛星を持たない国にとってはStarlinkが提供するサービスは極めて有用なのは言うまでもない。Starlinkはロシアからのサイバー攻撃を受けてその後対セキュリティレベルを上げる対策を取った。実際に使われるシステムはこの様にして進化して行くのかと考えさせられる事象であった。
商用地球観測衛星データもウクライナ、ロシアの双方で利用されている。戦争に利用されることは肯定的な意見だけではないかと思うが、今や地球観測衛星データの活用が優れている方が戦いを有利に進められることにも繋がって来る。米空軍は最も宇宙インフラを備えているもののそれでは作戦実行時に十分でないと判断しており、民間衛星データを積極的に活用するとの方針を出している。
国内に目を向けるとH3ロケットは再打ち上げに成功したことが、1番の出来事と考えている。欧州に見られる様に打ちたい時に打ちたいところへ打上げられない様になると宇宙開発の安定的な実施を難しくしてしまう。勿論価格競争力をつけて行くことも必要であるが宇宙開発の1丁目1番地はきちんと守ることは必要と強く感じている。
半導体の様に1度産業が衰退するとそれを取り戻す為に巨額の費用を必要とすることは忘れない様にする必要があると感じている。
宇宙予算については、今年から宇宙基金が始まり、今年の3,000億円の基金に続いて今年度の補正予算でも新たに3,000億円が予算化された。この基金を活用して国内の産業界の筋力がアップすることを切に願っている。これまではともすれば予算を削減することばかりに目が行っていたが、基金を使って1歩でも2歩でも世界に迫る企業が出て来て欲しいと願っている。
世界は想像以上のスピードで変化している。変化に柔軟に対応出来る企業しか生き残れなくなっている。過去の柵に捕らわれることなく、果敢に攻めて欲しいと願っています。
我々もコンサルタントとして最大限の御支援をさせて頂きたいと思っています。
今年も宜しくお願い致します。
2024年11月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス
【Established Space及び他トピックス】 | 【Hybrid Space】 | 【Emerging Space】 | |
【衛星】 | ■ ⽶国空軍は再突⼊カプセルテストとして4,800万ドルをヴァルダ社に提供(003)(図-1) ■ ロッキード・マーティン社がGPSの脆弱性に関して挑戦する(005)(図-2) ■ ノースロップ・グラマン社は北極圏衛星ブロードバンド・ミッション運⽤開始(010)(図-3) ■ 軍事⽤途に⽬を向けたミューオン宇宙天気監視衛星(014) ■ Heliophysics decadal surveyでNASAの2フラッグシップミッション推奨(017) ■ ⽶国宇宙軍当局者が中国の脅威の⾼まりを警告(020) ■ 中国は衛星が混雑軌道航⾏⽤の軌道上宇宙状況認識能⼒を構築中(021)(図-9) ■ インテルサット33eの破壊により宇宙領域の脆弱性が露呈(027) ■ 地磁気嵐により衛星の「⼤量移動」が発⽣(029) ■ ノースロップ・グラマン社が次世代極プログラムミサイル警報衛星製造開始(033)(図-13) ■ 中国がレーザーダイヤモンドコンステレーション試験衛星を打上げる(039) ■ EUがIRIS²コンステレーションの契約に署名(045) ■ NROが地球低軌道に100基以上の衛星投⼊するマイルストーンを達成(052) ■ 国防総省の報告書は中国の宇宙の進歩とAI主導精密戦を強調(056) ■ 退役した軍⽤気象衛星が壊れる(062) ■ ユーテルサット社がエアバス・ディフェンス・アンド・スペース社にOneWeb LEOコンステレーション拡張機製造を発注(063)(図-16) | ■ 欧州の投資部⾨がサテリオ社を⽀援へ(011) ■ 英国がOneWebの衛星を軌道から除去する試験を実施(019)(図-8) ■ ロッキード・マーティン社がFireflyロケットで5G実証衛星打上(022)(図-10) ■ AST SpaceMobile社がVodafoneに参画(023) ■ Maxar社がSatellogic社と他国の防衛機関監視を強化(032) ■ Novaspace社が⽊幡衛星市場は今後10年間で1,133億ドルの⼒強い成⻑で勢いを維持すると報告(038) ■ 軌道上サービサー社が新規制構築⽀援で英国が資⾦援助(068) ■ NASAが商⽤通信サービスで4社を選定(070) ■ 中国のメガコンステレーション衛星メーカーが1億3,700万ドルの資⾦を確保(082) | ■ GIESEPP MPプロジェクトは、費⽤対効果の⾼いSATCOM技術での費⽤対効果の⾼いブレークスルーにより完成(002) ■ 欧州企業が微⼩重⼒ペイロードミッションを提供(006) ■ Telesat Lightspeedが初期の設計レビューをクリア(012) ■ Globalstar社とParsons社が防衛市場向けの衛星サービスを公表(018)(図-7) ■ EchoStar Mobile社はLoRaWAN衛星中継関連機能追加でサービス拡⼤(024) ■ Ion-X社はエレクトロスプレースラスター製造のために1,300万ユーロを調達(026)(図-11) ■ HyImpulse社がHyMOVE OTV計画をSpacemanic社と提携し⼩型衛星ミッションのために実現(034) ■ ULA社はバルカンロケットの上段にスペースインターセプターの役割を含める(041)(図-14) ■ ヨーロッパで最も先進的な気象衛星が本格的に運⽤開始(043) ■ Esper社とLoft社が協⼒して次世代のハイパースペクトル画像を実現(044) ■ SES社がO3b mPOWER衛星の7機⽬と8機⽬を打上げ、MEOコンステレーションを強化(049) ■ ユーテルサット社がOneWebコンステレーション⽤に100基LEO衛星発注(051) ■ Maxar社、アジア太平洋地域での衛星情報契約を3,500万ドルで締結(058) ■ Turion Space社は軌道上宇宙監視で3,260万ドルの軍事契約確保(061) ■ True Anomaly社はJackal衛星軌道投⼊でマイルストーンを達成(071) ■ Spacecoin社は分散型宇宙接続のための最初の衛星を軌道投⼊(075) |
【打上】 | ■ ⻑征6Aで数千機のコンステレーション衛星システムの第3群を打上げ(015)(図-5) ■ ベガCは無事に打上げ計画に復帰(016)(図-6) ■ 中国は⻑征5Bで初の国光メガコンステレーション衛星打上げ予定(030)(図-12) ■ FAAは打上げライセンスプロセスを合理化するための措置を講ずる(042) ■ 中国は商業ロケットの失敗に苦しむが、年間打ち上げ回数記録を樹⽴(074) ■ インドがPSLVロケットによる宇宙ドッキング実験を開始(080) | ■ ヴァージン・ギャラクティック社がイタリア宇宙港からの弾道宇宙⾶⾏に関する研究契約に署名(040) ■ ESAとAvio社がVegaのアップグレードと打上げ契約に署名(057) ■ 中国ランドスペース社が再使⽤可能ロケットのための国家⽀援資⾦を確保(072)(図-18) ■ 中国CAS Space社はKinetica 1の打上げ失敗(077)(図-25) ■ ヴァンデンバーグ宇宙基地からのSpaceX社の打上げ回数増加による環境への影響を調査する研究を実施(081) | ■ PLD Space社がミウラ5打上げ施設建設への融資を確保(007) ■ Blue Origin社は最初のNew Glennの打上げは2024年内に予定(025) ■ SpaceX社が⽶国宇宙軍の即応型GPSミッションを打上げ(047) ■ VAST社がISSへの⺠間宇宙⾶⾏⼠ミッションをSpaceXと契約締結(059) ■ SpaceX社が2回⽬のミッドインクリネーションライドシェアミッションを開始(064) ■ Blue Origin社はNew Glenn打上げ前に第1段エンジン燃焼試験を実施(078)(図-26) ■ スペースX社はAstranis社のMicroGEO衛星の打上げ成功(079) |
【その他】 | ■ NASAは、次期アルテミス計画のスケジュールをさらに延期(013)(図-4) ■ オマーンの宇宙企業が中国のILRS⽉⾯基地プロジェクト参加に署名(031) ■ NASAがロボット⽕星探査の⻑期戦略を発表(046) ■ NASAがLEOでの⼈間⽣存を維持するための戦略を最終決定(048) ■ 神⾈19号の宇宙⾶⾏⼠が記録破りの9時間の宇宙遊泳を完了(050)(図-15) ■ パーカーソーラープローブは太陽に最接近中(067) | ■ タイタン探査ミッション「ドラゴンフライ」のドローン型探査機はファルコンヘビーで打上げられる予定(004) ■ アルテミス計画有⼈⽉⾯探査⾞LTVはNASAでテスト実施(076) | ■ Intuitive Machines社、Johns Hopkins APLパートナーが、安全、安⼼、⾼信頼性⽉⾯インフラ解発を推進する(008) ■ OSTP社がシスルナーの科学技術計画を発表(054) ■ 商⽤宇宙ステーションアクシオム・ステーション建設⼿順⾒直し(066)(図-17) |
【国内】 | ■ 三菱電機MEイノベーションファンド、グローバル・ブレイン及びANAホールディングスは株式会社ゼノ・アストロノーティクスに出資(001) ■ 中国に対抗するために⽶国と⽇本は宇宙同盟を強化(028) ■ JAXA、みちびき6号機⽤「H3」ロケット5号機打上げ予定⽇公表(035)(図-20) ■ 三菱電機がHTV-X1号機のサービスモジュール本体を公開(036)(図-21) ■ JAXAイプシロンS再地上燃焼試験で爆発した第2段モータ調査報告(069)(図-24) ■ ⽉探査機「SLIM」のプロジェクト終了を前にJAXAが会⾒で成果総括(073) | ■ JAXAが⽉⾯航法システムの開発業者にArkEdge Spaceを選定(009)(図-19) ■ アストロスケール社ADRAS-Jがスペースデブリへ最接近(037)(図-22) | ■ スペースワン社がカイロスロケット2号機を打上げるが、発射後に⾶⾏中断措置で衛星軌道投⼊できず(053)(図-23) ■ Firefly社とispace社が⽉⾯着陸船打上げでFalcon 9をライドシェア(055) ■ Rocket Lab社はSynspective社OWL打上げ準備完了(060) ■ Ispace社「HAKUTO-R」ミッション2を2025年1⽉中旬にも打上げ(065) |