海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2024年05月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳

論説:GEOINT 2024及びAsia Satellite Business Week(ASBW)について(村上)

GEOINT 2024について

USGIF(United States Geospatial Intelligence Foundation)が主催するGEOINT 2024 (Geospatial Intelligent)がOrlando (Florida)で5月5-8日の間、開催された。
GEOINTは、防衛、セキュリティを中心とする地理空間情報に関するシンポジュームであり、この分野でのシンポジュームとしては、最大規模のものである。2004年から開催されており、今年が20回目の記念すべきシンポジュームとなった。参加者は5,000人規模であり、Satelliteの1万人や Space Symposium の1.5万人に比べると規模は劣るものの地理空間だけに特化したシンポジュームであるにも関わらずこれだけの人が集まるのは、米国での防衛・安全保障の規模の大きさを認識せざるを終えないと感じた。

今年のテーマは、「全ての次元と領域」であった。ウクライナ戦争やガザ侵攻で地理空間情報の役割は格段に上がっている。さぞ、順調に利用が進んでいるとの話が出るかと思いきや課題は多々あるとの話の方が多かった。

一つが安全保障に地理空間情報が十分活用されているものの戦闘への利用と言う観点では改善すべき点があるとのことである。情報局と米軍の連携と商業データをどの様に活用するか言う点でまだまだ改善すべき点があると米軍関係者は述べていた。
有効なデータかどうか情報局で確認の上、米軍にデータを提供しているやり方では作戦への利用が制約されると言う米軍からの不満がある。もう1つが民生で技術が進んでいるAIや機械学習の技術導入が十分進んでいないことへの声も出ていた。AIや機械学習ももっと活用する必要があるとの意見はあり、これに対応した動きは行っているものの民間のスピードが早い上にかなり有用であることが分かって来ている状況において、とても追いついていない状況とのことであった。
対中国への優位性を維持する為には、これらの課題を解決して行く必要があるとのことであった。

本レポートは、Euroconsultからの出張者のレポートをベースに作成した。仮想空間情報を共有させて頂いたことになる。仮想空間はやはり実体験では無い為、感情を込めると言う意味では劣ってしまうことをお許し頂ければと思います。

Asia Satellite Business Week(ASBW)

今年で4回目となるASBWがシンガポールで5月30日開催された。ASBWは,Asia Tech×Singaporeの1セッションとして開催されているもので、1万人を超える人が参加していた。
ASBWは、日本からはアジア最大の衛星オペレータであるスカパーJSATや地上局サービスを行っているインフォステラやSpace Compassに参加頂いた。
アジアの経済成長に伴い、通信衛星の需要が高まり、マレーシアのMeasatやタイThaicomの経営は順調だと思っていたが、欧米の衛星オペレータSESやEutelsatに市場を取られているのにスカパーにもシェアを奪われており、経営的に苦しいとのことであった。これに加えてStarlinkとの競争が激化しており、通信単価が確実に下がっているとのことであった。
海上通信についてもStarlinkのサービス展開は早く現状上手い対応策を取れていないとのことであった。それに加えてこれから低軌道衛星通信サービス(Telesat)も市場に入ってくる予定であり、正直政府支援が無いと厳しいと話していました。

通信事業は国境がある事業である意味通信インフラは国として必要であり、保護政策が機能していた事業であったが、浸食はかなりのスピードで進んでいるなと感じた。
衛星を使った携帯通信事業については、Space-Xが先行しているもののこの分野で巻き返しを図ると新興企業は話していた。

コロナが去り、普通に口角泡を飛ばして話が出来る様になったのは、良かったと感じている。
ふと気づくと大丈夫だっけと心配になってくるがそんなことは言ってられない。
シンガポールでは何時行ってシーフードを食べていたが今回は英国料理とインド料理を毎日食べた。良く考えたら、イギリス東インド会社があり、イギリスが長年に渡って支配して来たシンガポールでは本来は英国とインド料理が主流でり、これを食べてこそ歴史の重さを理解できると言うことかも知れないと感じた。


WSBWは、今年からWorld Satellite Business Week → World Space Business Weekにブランド名を進化。
  1. 宇宙ビジネス関連各社(衛星事業者、衛星製造会社、打上げ事業者、金融業者など)のトップクラスの方々が集まるコンファレンス。
  2. 開催日 / 場所:2024年9月16日-20日 / WESTINホテル・パリ

《昨年開催のWSBW2023の主要指標》

SDSS(宇宙防衛・安全保障サミット)は、フランスの防衛・軍事団体と提携して、第一回サミットを初めて開催。
  1. 防衛、安全保障、宇宙産業におけるグローバル・リーダーが一堂に会する重要なイベント(WSBWとの相乗効果の実現)。
  2. 開催日 / 場所:2024年9月17日-18日 / Automobile Club de France(フランス自動車クラブ)・パリ

本サミットは、国際的な防衛・軍事団体の協力と支援により開発され、防衛、安全保障、宇宙分野の世界的リーダーが一堂に集まる極めて重要なプラットフォーム。
→ SDSSに参加する防衛関係者にとって、潜在的なパートナー、イノベーター、サービスプロバイダー、投資家との理想的な交流の機会。

《プログラム概要(招待講演者、トピックス)》

Invited speakers

  • Space Commands and military agencies
    (US, France, Spain, Germany, Korea, UK, Japan, Saudi Arabia, Oman, …)
  • Space agencies and research centers
  • International organizations and alliances
    NATO, European Defense Agency (EDA), European Union Satellite Centre (SatCen), European Union Agency for the Space Programme (EUSPA)…

Explore Topics Surrounding

  • Space defense strategies
  • Related activities & partnerships
  • Space surveillance & operations monitoring
  • Space assets operations & protection
  • New capabilities development & challenges for defense actors
  • Innovation & adaptation to military needs
  • Role & relationships with the industrial ecosystem
  • Focus sessions: Connectivity, remote sensing

《最近のWSBWへの防衛関係参加者》

  • French Space Command (CdE)
  • National Space Council (US)
  • NATO Communications and Information Agency
  • Korean Agency for Defense Development (ADD)
  • Directorate General of the Armament (F-DGA)
  • European Defence Agency (EDA)
  • EuropeanUnion Satellite Centre (SatCen)
  • Ministry of Armed Forces(F)United States Air Force (USAF)
  • United States Space Force (USSF)
  • Defense Acquisition Program Administration (DAPA)
  • Ministry of Defence(Spain)
  • Canada Department of National Defence
  • Chilean Air Force, …

《キーハイライト》


2024年5月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【Established Space及び他トピックス】【Hybrid Space】【Emerging Space】
【衛星】■SES、インテルサットを31億ドルで買収(001)
■エアバス社、Pléiades Neo Nextで地球観測コンステレーション拡⼤(004)
■L3Harris社がミレニアム社のミサイル追跡衛星のペイロード契約受注(010) (図-2)
■⽶空軍は、軍事と商⽤の宇宙ネットワークを融合(013)(図-4)
■L3 Harris社がGEOXOイメージャーの開発で7億6,550万ドルの契約受注(014)
■Muon社、⼭⽕事の検知と対応のためのコンステレーションを構築(022)
■Maxar Intelligence社とLockheed Martin社、パートナーシップを拡⼤(024)
■宇宙の持続可能性に関するNASAの戦略(039)
■NASAは、地球科学ミッションの新ライン提案を選定(042)
■中国が4基の⾼解像度リモートセンシング衛星を打上げ(057)
■宇宙軍は軌道上給油の⻑所と短所に関する詳細な研究を計画(059)
■NASA報告書は、軌道上デブリ対応の費⽤対効果の⾼い⽅策を特定(065)
■インテルサットのミッション延⻑機は衛星寿命を⼤幅に延⻑(069)(図-15)
■⽶国は、軍事宇宙実験プログラム遂⾏のための衛星メーカーの⼊札を依頼(070)
■ノースロップ・グラマン、衛星寿命延⻑サービス拡⼤(075)(図-15)
■Terran Orbitalがロッキード・マーティンからSDA-T2TLのためのサブコン契約を締結(043)
■スペースX、Maxarの新地球観測衛星を初打上げ(044)
■Unseenlabsは、陸、空、海、宇宙に事業焦点を拡⼤(045)(図-8)
■Tomorrow.io、2つのマイクロ波気象センサー衛星打上げで国防総省の契約を受注(051)(図-10)
■Inversion Spaceは「宇宙倉庫」で軍事市場を狙う(052)
■SpaceXがNRO初の次世代偵察衛星を打上げ(062)
■Space Development Agencyがミサイル防衛実験専⽤の地上システムを調達(076)
■ミレニアム・スペースがミサイル追跡衛星製造で4億1400万ドルの契約を締結(005)
■ポータル・スペース・システムズ、新たな⾼機動性衛星計画を発表(006)(図-1)
■Redwireが2番⽬のVLEOサテライトプラットフォーム発表(030)(図-7)
■測位ナビゲーションシステムの耐性強化のためのVIAVI社商⽤解決案を提供(031)
■Forresterʻs DigestはEchoStar破産リスクが極めて⾼いと⾔及(037)
■RKA社がSatcoms Innovation Group(SIG)に参加(040)
■ポータルスペースシステムは国防総省USSFで100万ドル契約受注(041)
■SatVuは2025年にサーマルイメージング事業の復活を⽬指す(048)
■Omnispaceは、Starlinkからデバイスへの直接⼲渉を報告(053)
■AFWERX社は宇宙安全確保のための衝突解析フレームワークの開発業者としてScout Spaceを選定(054)
■SpacePNT社がLEOでPNT技術の実証を完了(063)
■HisdesatのSpainSat NG IIが最終製造段階に⼊る(077)
■LEOcloud社、Space EdgeデータセンターをISSに送る(078)
■Verizon社、スマートフォン衛星へ1億ドルを直接投資(079)
■ThinkOrbital社、X線ビジョン搭載の衛星修理ツールキットを開発(082)
【打上】■アリアンスペース・ベガC、2025年にESA SMILEを打上げ(003)
■宇宙⾶⾏⼠をISSに運ぶ準備が整ったボーイングスターライナーの打上げへ(012)(図-3)
■中国が初の⻑征6号Cロケットを打上げ(021)
■スターライナーの有⼈試験⾶⾏の打ち上げがロケット原因で延期へ(023)
■Avio社はロケット打上げ事業において防衛顧客に依存(036)
■中国、商⽤宇宙港を拡張し、今後の打上げ急増に対応(060)
■ESA、Thales Alenia SpaceとThe Explorationを商⽤カーゴ担当に選定(064)(図-13)
■FAA再認可法案には短期間の習得期間の延⻑が含まれる(046)(図-9)
■スペースプレーン「ドリームチェイサー」がケネディ宇宙センターに到着2024年後半に初⾶⾏予定(066) (図-14)
■中国の秘密のスペースプレーンが物体を軌道に放出(072)
■Rocket LabがNASAの気候変動衛星2機のうち1機⽬を打上げ(073)
■SpaceXは⽊曜⽇にMaxar 1ミッションのWorldview打上げを予定(008)
■HyImpulse、固体パラフィン燃料観測ロケットの⾶⾏試験に成功(015)
■スペースX、欧州の測位システム「ガリレオ」衛星を打上げ、ロケット1段⽬は20回⽬の使⽤(025)
■ヴァージン・ギャラクティック、次世代スペースプレーン⺟船の⾶⾏率向上を計画(027)
■ブルーオリジン・ニューシェパードの有⼈NS-25ミッションは5⽉19⽇の打上げを⽬指す(047)
■ブルー・オリジン社、ニュー・シェパードで有⼈弾道⾶⾏を再開(055)(図-9)
■SpaceXは、Starbase拡張が続く中、Starshipテスト⾶⾏を準備中(061)(図-12)
■中国の再使⽤型ロケットメーカーが新しいMEOコンステレーションで協⼒(085)
■Starliner、次の有⼈試験⾶⾏の打ち上げ準備完了(086)
■SpaceXのStarshipʻs Dress Rehearsalが6⽉5⽇に準備完了(087)(図-12)
■SpaceXは、次のStarshipテスト⾶⾏を6⽉上旬に予定(068)
■Chart社、スペースバルーン打上げ成功(071)
■Ursa Major が新しい極超⾳速ロケットエンジンの地上燃焼試験を完了(084)
【その他】■中国の神⾈17号の乗組員が地球に帰還(002)
■中国の宇宙船「神⾈18号」が中国宇宙ステーションに到着(009)
■NASA検査官がオリオン熱シールドの問題を指摘(011)
■ISSでクルードラゴン宇宙船の移動を実施し、スターライナー到着に備える(017)
■中国の嫦娥6号が⽉ローバーを打上げへ(018)(図-6)
■NASAが商⽤⽕星ミッションの研究を表彰(019)
■議会は、NASAの科学予算の⼤幅な増加を求める(028)
■中国初の中軌道ブロードバンド通信衛星打上げ(032)
■セルビアが中国のILRS⽉⾯基地プロジェクトに参加⼀号に(034)
■中国、⽉探査機「嫦娥6号」の⽉周回軌道投⼊に成功(035)
■NASAとESAが⽕星探査機ミッションの協⼒合意(056) (図-11)
■エアバス社、ESAの宇宙科学衛星を建造予定(067)
■ULAはスターライナー有⼈宇宙機の打上げ準備完了、打上⽇を発表(080)(図-3)
■ULAスターライナー、ISSへの初の有⼈打上げに向けてカウントダウン開始(007)
■国際宇宙ステーション(ISS)を超えて:⽶国はLEO、シスルナー、そしてその先でリードを⽬指す(050)
■Astroboticは、将来の⽕星へのミッションを可能にするためのNASA JPL Commercial Service Studies契約を受注(058)
■MDA SpaceがStarlab Spaceの商業宇宙ステーションベンチャーに参加(083)(図-20)
■SpaceX、Polaris Dawnミッション⽤にEVAスーツの新デザインを発表(016)(図-5)
■Sierra Spaceは、同社の宇宙プラットフォームの7回⽬の検証試験(2回⽬の構造試験)の準備中(020)
■Sierra Space、Dream Chaserをフロリダ州に移送(029)
【国内】■防衛省、「迅速に打ち上げ可能な衛星」を川崎重⼯と実証へ(026)(図-16)
■JAXA⽕星衛星探査計画「MMX」探査機に搭載⽤4K・8Kカメラが完成(033)(図-17)
■⽇欧⽔星探査ミッション「ベピ・コロンボ」探査機の推進系で問題発⽣(049)
■JAXA⽉探査機「SLIM」4回⽬の越夜後通信応答なし、翌⽉に再挑戦へ(088)
■SpaceXが⽕曜⽇にESAとJAXAのEarthCARE衛星を打上げへ(074) (図-19)
■スペースX、⽇欧共同の地球観測衛星「EarthCARE」の打ち上げに成功(081)
■⽉着陸船を⼿掛けるispaceが⽇⽶のアルテミス協定の合意に期待(038)(図-18)