海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2022年10月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:大石強
発行責任者:葛岡 成樹

■ 論説-1:Silicon Valley Space Week 参加報告(葛岡)

■ 論説-2:スペースXのスターリンク衛星と中・露 (大石)

■ 論説-3:ミサイル監視システムの今後について (村上)

論説-1:Silicon Valley Space Week 参加報告(葛岡)

別途配布の『Silicon Valley Space Week 参加報告』を参照願います。

論説-2:スペースXのスターリンク衛星と中・露 (大石)

今月末に発表された米国国防戦略においては、中国などが米国衛星を標的とする可能性が高いと警告するとともに、軍事宇宙ネットワークを商用システムによる補完の必要性も挙げられている。 

数年前に『スペースXが衛星プロジェクトにて軍用機との暗号化されたインターネットを試験』と報道されたが、ロシアによるウクライナ侵攻後、商用システムの中では、スペースXのStarlinkによる軍事との関連が継続的に報道されている。例えば、今年6月以降でも各メディアにおいて、下表のような報道が続いている。

同表中、スターリンクのサバイバビリティに関する報道では、米宇宙軍宇宙開発庁長官が『ロシア当局は、ウクライナ軍の通信生命線として機能してきたSpaceXのインターネット衛星ネットワークを抹殺すると、脅しをかけたにも関わらず、1基のスターリンク衛星も撃墜していない。ロシアは2021年11月に低軌道の衛星を弾道ミサイルで攻撃できることを実証したが、スターリンク衛星を撃墜していないという事実は、攻撃を抑止し、レジリエンスを提供するコンステの力を物語っている』という主旨の発言をしたと伝えられている。現在開発中のDoD小型衛星コンステシステムの正当性を根拠付けることが目的とは言え、極めて挑発的ともとれる内容である。

月日報道内容出典
6月19日ペンタゴンは、ロケット展開による緊急対応部隊向にSpace-Xの使用を検討インターセプト
8月15日SpaceXは、空軍と欧州及びアフリカにおける$1.9MのStarlinkサービス契約を獲得スペースニュース
10月13日スターリンクの市場支配は、国防総省のハイブリッドネットワーク計画に影響を与えるスペースニュース
10月13日SpaceXは、ウクライナの重要な衛星サービスにもはや支払うことができないと言い、国防総省に支払を依頼CNN
10月25日戦争におけるスターリンクのサバイバビリティは、国防総省の将来のコンステレーションに向け良い兆候スペースニュース
10月27日SpaceXと国防総省は、ウクライナでのスターリンクの資金調達に関する論争にもかかわらず、関係を深めるウォールストリートジャーナル

一方、敵対国として挙げられているロシア及び中国において、スターリンクがどのようにとらえられているのかという点では、最近、以下のような記事も見受けられた。

  • 中国の軍事科学者、スターリンク対策(無効化、破壊)の開発を呼びかけ:「SpaceX社のStarlinkが国家の安全を脅かした場合、中国はこれを無効化あるいは破壊できなければならない」という趣旨の論文が、査読付き学会誌Modern Defense Technologyに掲載された(6月1日付の南華早報)。
  • スターリンクを破壊せよ!(Killing Starlink!):ロシアのメディアは、軍事専門家の意見を基にした見解として、『Starlink サービスを破壊するには4000発以上のミサイルが必要。但し、一部の衛星はミサイルの到達範囲を超えた600キロメートルの高度を周回しているため、最小限のモードではあるが、ネットワークは引き続き機能する可能性がある』と伝えている(10月17日付のEurasian Times)。

上記は、必ずしも両国における統一された考え方という訳ではないが、一つの側面からの情報として参考になるのではないかと思われる。いずれにおいても『スターリンクの破壊』、あるいは『無効化(ジャミング等)』という表現が使用されており、今更ながら安全保障上の大きな脅威として認識されていることが分かる。
尚、今月27日、ロシア外務省の高官は、西側の商用衛星がウクライナでの戦争に関与していれば、ロシアにとって「正当な」標的になる可能性があると改めて警告した。

今後、ロシアが国際的にさらに追い詰められ、軍事戦略的効果というよりも、象徴的な報復行為として、例えば、「核の使用よりは、衛星破壊の方がハードルが低い」となどと判断した場合など、半ばやけっぱちに衛星破壊行動に出ることも十分想定される状況にあると危惧される。また、ウクライナでのスターリンクの実証結果を受け、中国のコンステ整備の加速・拡大等、歯止めのかからない連鎖に陥る状況も懸念される。

論説-3:ミサイル監視システムの今後について (村上)

米国のミサイル監視システムは、ミサイルディフェンスエイジェンシー(MDA)が中心になって、静止衛星により構成されて来た。しかし、静止衛星だけでは、低軌道を変則軌道で飛ぶ極超音速ミサイルや移動式のミサイルの監視は難しいことが明らかになって来ており、これに対処する目的で、宇宙庁(Space Development Agency)が設立され、低軌道に衛星群を配置して、ミサイル監視、通信網の整備を進めている。

これに加えて、中軌道(MEO)に衛星を配置して、ミサイル監視を進めることが宇宙軍から発表された。多軌道に衛星を配置して、夫々の機能分担を明確にしつつ、ロバストで確実で効率的なシステムを作ることが求められている現在において、構成に中軌道を入れて、低軌道と静止軌道に配備した衛星と連携をとることは重要と考えている。
静止軌道に比べて中軌道に衛星を配置することで広範囲の観測が可能となる。また、低軌道の衛星と連携することにより、正確で迅速な情報の獲得の精度を向上させることが可能となる。

また、開発・調達については、SDAで実施しているAgile方式を採用することで、最新の技術を採用しつつ、計画を柔軟に見直していくとの方針が示されている。SDAの方式は、予算のキャップを嵌め難いデメリットはあるものの、開発側としては開発者間で互いに競ってより良いシステムを提案し続ける必要があり、革新的なシステムを構築する上では、有効と考えている。

従来の静止衛星を中心とした調達では、調達数や機会が限られていた上に、一旦開発者に選定されると他の新興企業は参入しづらい状況となり、システムがともすれば、時代遅れになることが指摘されていた。開発提案、予算化まで数年を要し、開発メーカ選定、開発に7~8年を要する。システムの更新も容易で無い上に配備が終わったころにはシステムが古くなってしまうのが課題であった。

米国の国防省は使っている予算が膨大であり、その担っている責任も大きいが、DARPAを始めとして、革新的な技術開発を進めることにより、技術的な優位性を維持していることは見習わなければならないと感じている。
我が国の予算制度上の課題はあるものの、最新の技術を取り入れる仕組みと最新技術を開発する体制の充実は早急に行う必要があると感じている。


【今後発行予定のEuroconsultレポート紹介】

地球観測データ&サービス市場

宇宙探査の見通し

光通信と市場


2022年10月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【Established Space及び他トピックス】【Hybrid Space】【Emerging Space】
【衛星】■ハンガリーの4iGは、段階的にスペースコムの過半数を購入[NO.004]
■カザフスタン、SES O3b mPOWER + RCSC 経由で高速接続サービスを受ける[NO.008]
■Viasat が戦術データ通信事業を L3Harris に売却[NO.010](図-1)
■SESは、FCCのC帯クリアランスに伴う40億ドル支払に近ずく[NO.015]
■SDA、NExT向プロトタイプ契約をBall Aerospaceに発注[NO.018]
■英国の競争監視機関は、Viasatのインマルサットの買収について懸念を抱いている[NO.020]
■WORK Microwaveは、ESA及びとドイツ航空宇宙センター向けに最先端の光モデムを開発 [NO.022](図-2)
■Eutelsatは、イラン内の衛星妨害装置が外国のチャンネルを混乱させていると述べた[NO.025]
■中国、北斗衛星測位システム強化試験衛星を打ち上げ[NO.026]
■インマルサット、グローバル通信サービスで米海軍契約を獲得[NO.033]
■Yahsat Direct-to-Cell イネーブラー eSAT Global投資[NO.044]
■Viasatのインマルサット買収は、合併レビュー遅れに直面[NO.045]
■SES がインテルサットのC帯共有決定に異議を申し立て[NO.053]
■インマルサットの売却、豪の外国投資監視機関をクリア[NO.058]
■Eutelsat、中東上空でジャミング防御を強化[NO.059]
■衛星通信事業者は、アジアの衛星容量の津波に備える[NO.070]
■Iridiumはスマートフォンへの直接サービスにさらに注力[NO.071]
■米国国防戦略、『レジリエント、冗長』の宇宙NWが必要[NO.078]
■SESのO3b mPOWERにて、クラロ・ブラジルは4Gおよび5G対応のモバ
   イルサービスをAmazonリージョン全体に拡張可能[NO.080]
■EutelsatとOneWeb、合併を支える財務状況共有[NO.042]
■Amazon、Kuiper衛星をDoDのメッシュNWにリンク[NO.044]
■Starlink市場支配、DODハイブリッドNW計画影響[NO.046]
■DoDは、SpaceXとの交渉を続ける中で、ウクライナで衛星通信を提供するためのオプション検討中[NO.048]
■地球観測の統合は依然として面倒で時間がかかる[NO.049]
■米軍顧客向の競争態勢を整えた衛星BBプレーヤー[NO.052]
■パナソニック アビオ、OneWeb BBを航空機に導入[NO.060]
■LEO事業者のアジア参入の鍵は、パートナーシップ[NO.061]
■DARPAは、LEO小型衛星「トランスレータ」光通信端末を開発向に11チームを選択[NO.062]
■英国国防委員会、ユーテルサット/OneWebの徹底的な見直しを要請[NO.065]
■Starlinkの戦争でのサバイバビリティは、国防総省の将来のコンステにとって良い兆候[NO.073]
■中国の商用リモセン衛星会社がコンステサイズ倍増[NO.082]
■AEI,York Space Systemsの過半数の株式取得予定 [NO.011]
■EnerStar Solutionsが3度目のスターリンク・エンタープライズ・リセラー契約を発表 [NO.012]
■SpaceXは、5G計画が以前に考えられていた以上にスターリンクを混乱させる可能性があると言及[NO.017]
■York Space、宇宙開発庁から12 基の衛星契約獲得[NO.021]
■OneWeb、イノベーション チャレンジ コンペティションを発表[NO.039]
■Starlink が高速プライベート ジェット ブロードバンド サービスの予約注文を受付中[NO.067](図-5)
■新しいStarlinkディッシュキットは、あらゆる移動する地上オブジェクトでサービス可能に[NO.074]
■新たに買収したナノアビオニクスは、小型衛星拡張を計画[NO.077]
■NorthStar SSA衛星初号機は、2023年にVirgin Orbitにて打上げ[NO.088]
【打上】■ULA、2機のSES通信衛星の打ち上げに成功 [NO.041]
■中国、長征11号の打ち上げに成功 衛星測位システムの増強技術を試験する衛星が搭載される[NO.057]
■Ariane 6の初フライトは2023年後半にスリップ[NO.064]
■インド、OneWeb打上に向順調に推移[NO.019](図-4)
■SpaceX は、Intelsat が今年打上げる 6基の C帯衛星のうちの2基を展開[NO.031]
■Amazon、Vulcan初フライトでKuiper衛星打上[NO.038]
■ESAは、2つのミッション打上げに Falcon 9使用[NO.066]
■One Web打上げは、商用打上げにおけるインドの役割が拡大する兆候を示している[NO.069]
■FireflyのAlphaロケットは2回目の打上げにて軌道到達[NO.006](図-6)
■ICEYEがSAB Launch Servicesと打ち上げ契約を締結[NO.007]
■Sherpa tug、打上1ヶ月後、軌道上昇させ始めていない[NO.016]
■Fireflyは、ペイロードの再突入にも関わらず、Alphaの打上は成功と述べた[NO.030](図-7)
■Amazonコンステのマイルストーン期限確保に向け、Starshipによる打上げも可能性あり[NO.081]
【その他】■宇宙軍、シスルナ宇宙領域状況把握の要件を研究[NO.003](図-3)
■下院委員会がFCCの軌道デブリ規則に疑問を呈した[NO.005]
■月探査計画「アルテミス1」打上は11月中旬以降の見込み[NO.009]
■AFRLが宇宙事業者向けの「サイバーレンジ」を開発[NO.027]
■宇宙企業は、厳しい投資環境に直面[NO.032]
■探査機衝突で小惑星の公転周期が短くなったことを確認![NO.040]
■NASA月探査計画「アルテミス1」11月14日打上実施予定[NO.047]
■露当局、西側商業衛星が「合法的な」標的の可能性表明[NO.079]
■NASAが新しい仕組で宇宙開発計画案設計 修正案公表[NO.086]
■NASAとSpaceXが、ハッブルの民間サービスミッションの可能性を研究[NO.002]
■ExoTrail が仏機関向けに軌道遷移を実証する契約を獲得
   [NO.034](図-5)
■Vyomaの宇宙交通管理へのシード投資により、新しい追跡システムと自動化サービスの開発が可能に[NO.054]
■ロケットラボ、NASAのCADREモバイルロボットプログラムの太陽電池パネル製造契約受注[NO.055]
■Quantum Spaceは、最初のシスルナーミッションを発表[NO.075]
■コンステ向アンテナ供給業者SatixFy、株式公開[NO.083](図-8)
【国内】■米宇宙軍大将、防衛相を表敬訪問 連携構築[NO.013]
■若田光一さんがISSに到着[NO.024]
■イプシロン6号機打上げ失敗 破壊指令、[NO.036](図-9)
■自民党、宇宙関連予算抜本的強化 ロケット等[NO.063]
■政府、1000億円基金創設 スタートアップ支援[NO.072]
■対ミサイル、衛星50基敵基地攻撃に利用視野 [NO.084]
■イプシロン失敗、「配管詰まり」か「弁の不具合」[NO.085]
■中露の「キラー衛星」に対抗、日本上空の監視衛星2基態勢へ…宇宙防衛を強化[NO.087](図-10)
■世界初「月保険」を ispace と開発[NO.023]
■ふくい宇宙産業創出研、「超小型衛星」事業化へ[NO.028]
■衛星ネット「スターリンク」日本で利用可能に。[NO.037](図-11)
■羽生田鉄工所など、「DX寺子屋」オープン [NO.050]
■ispace「HAKUTO-R」ミッション1、11月打上[NO.051](図-12)
■アクセルスペースの「AxelLiner」実証衛星初号機Pyxisの軌道上実証に向けてソニーグループ株式会社と共同研究を実施[NO.068](図-13)