海外宇宙ビジネス・マンスリーニュース

2025年5月31日 (株)サテライト・ビジネス・ネットワーク

編集者:岡屋 俊一
発行責任者:村上 淳

論説:米国 宇宙計画全般について(村上)

日本がゴールデンウィークの間、米国ではホワイトハウスから2026年度の予算指針が発表された。これはあくまでホワイトハウスの指針であり、予算は議会が権限を持っているので、今後議会と政府の間で調整が行われるスタート点が示されたに過ぎない。しかし、最近の政府の動きやこの案を見ていると政権としての意向は感じ取れる。
今回の案では国防予算はゴールデンドームの開発で大幅増加を考えているがそれ以外は軒並み削減する方針を出している。
その様な中、NASAについては、探査は継続する方向であるものの、従来の月重視から月と火星の両方を目指す方向を打ち出した。方法についても従来の主力輸送機であるSLSロケットとオライオン有人機から新たなシステムの導入を検討するとのことである。また、月周回軌道ステーション(Gateway)を中止することを打出した。国際宇宙ステーションについても運用費の削減を目指すとある。地球観測は半減、惑星探査も半減(火星サンプルリターンは中止)、技術教育プログラムは中止となっている。

SLSとオライオンでNASAの予算の30%以上を使っており、この2つのシステムが計画全般の足かせになっていたのは事実である。この2つのプログラムには全米の多数の会社が参加しており、雇用の維持と言う観点では非常に有効であった。ただ、余りに高すぎるし、古いシステムなので革新性と言う観点での見直しと考えている。シャトルを終えた時に輸送システムをどうするかの議論があり、シャトルの技術を活かして、効率的なシステムに置き換える計画であったが、コストプラス契約であったこともあり当初より50%も予算をオーバーしてしまい。ある意味、自滅への道を歩んでしまったと考えている。

一方で、SLSもオライオンも3号機まではほぼ完成していることから、直ぐに辞めたとしても予算の削減効果が期待出来ないのと代替システムも今直ぐ実用段階に無いので無用な混乱は避けたいとの思いもあって、徐々にフェーズアウトさせると言う判断になったと考えている。

古くなった国際宇宙ステーションもフェーズアウトに向けて、予算を削減する方向を出したと考えている。

地球観測や惑星探査は政権としての意向が反映され易い分野であるものの、ここまで行うのかと言った感じを持った。この辺りは投資効果が目に見える分野にお金を入れると言った方針が良く出ているなと感じを持った。

Trump政権は米国の大学に対して現在厳しい姿勢で臨んでいるが、政権の基本理念として人材や技術に対する投資よりも目に見えるシステムの構築に関心が高い様に思える。

5月末にNASAから予算案が出て来た。探査については、新たな方向性が示された。地球観測、科学については大きなメスが入る案となっている。これから議会審査に入って行くが色んな議論が出て来ると感じている。

5月末にはStarshipの打上げが行われたが、成功するには至っていない。システムとして安定するまでには程遠い。今後、どんどん飛ばして技術を磨いて行くとは思うが、輸送機が出来なければ全ての計画は進まないことになってしまう。

Space-XはFalcon9と言う手段を持ち、2日に1度ロケットを安定的に打上げると言う誰も成し遂げたことの無い地点まで到達した。このことは驚嘆に値すると誰もが感じている。

しかし、Starshipの頂きはこれより遥かに高い。これをどう乗り切るかに米国の宇宙計画は大きく依存しているのは事実である。


NOVASPACEとしては旧Euroconsultの時から長年Parisの中央に位置する歴史あるWESTIN Hotelでイベントを開催して来ましたが、WESTIN Hotelの改修に伴い、日本大使館に近い、Hotel du Collectionneurで開催することになりました。今年も多数の方に参加頂きたいと思っています。

  1. WSBW(World Space Business Week)
    • 宇宙ビジネス関連各社(衛星事業者、衛星製造会社、打上げ事業者、金融業者など)のトップクラスの方々が集まるコンファレンス。
    • 開催日/場所:2025年9月15日-19日/ Hotel du Collectionneur ・パリ
  2. SDSS(宇宙防衛・安全保障サミット)
    • 防衛、安全保障、宇宙産業におけるグローバル・リーダーが会するイベント。昨年に続いて第2回目の開催。
    • 開催日/場所:2025年9月16日-17日/ Les Salons Hoche・パリ

Since   1997
Business Leaders Attending     1.600+
Executive-Level Speakers         260+
Partners & Sponsors                 110+
Public and Private Organizations   520+

Speakers 60+
Attendees 300+
Sponsors & Partners 30+
Countries 35+

SDSS(宇宙防衛・安全保障サミット):

本サミットは、国際的な防衛・軍事団体の協力と支援により開発され、防衛、安全保障、宇宙分野の世界的リーダーが集まるプラットフォーム。IRIS2と政府衛星網との連携についてもデスカッション予定。

《プログラム概要》

  • Space Commands’ Leaders: Navigating a Rapidly Evolving Space Domain
  • International Cooperation: Shaping the Future of Space Security Frameworks
  • Strategic Perspectives from Defense and Armament Agencies
  • Novaspace’s Strategic Views
  • Space Surveillance soon facing a 50,000+ objects’ environment
  • Space as a Modernization and Augmentation Asset for Military Force
  • Space Agencies’ Contribution to the Security Equation
  • IRIS² and Institutional Perspectives: The Future of Secure Government Satcom
  • From Innovation to Operations: Enabling the Transformation of Defense Capabilities
  • Building Next-Generation Military and Secure Space Systems
  • Satcom Constellations: Unlocking New Capabilities for Military Communications
  • Geospatial Intelligence: Next Frontiers and Challenges for GEOINT
  • Enhancing Mission and Cyber Security
  • Integrating Space-Based Capabilities into Military Platforms

2025年5月 宇宙ビジネス関連『事業ポジション別』・『市場分野別』トピックス

【民間宇宙トピックス】【防衛宇宙トピックス】【その他】
【衛星】■SES社はO3b mPOWERフリートの30%拡張を期待(012)
■MTG-S1及びSentinel-4が宇宙に一歩近づく (019)(図-6)
■ClearSpace社が英国のデブリ除去ミッションの第2フェーズを完了 (020)(図-7)
■AST SpaceMobile社が243機の衛星を打上げ(032)
■Viasat社とBlue Origin社はNASA Communications Services Projectの打上げテレメトリーデモで提携 (045)(図-12)
■Voyager Technologies社のファイル公開(053)
■MDA Space社は競合入札に対抗のためにSatixFyオファー43%引上げ(059)
■エアバス社の次世代衛星「スカイネット」が大きな節目を迎える (064)(図-16)
■中国の民間企業が政府用衛星コンステレーションを建造する契約を獲得(069)
■Apex社がコンステレーション衛星バス「Comet」を発表(078)
■防衛事業に特化した宇宙スタートアップTrue Anomaly社が2億6,000万ドルを調達(002)
■米国宇宙軍が12社合計2億3700万ドルの小型衛星調達契約(003)
■テラン・オービタル社が宇宙軍のSTEP 2.0小型衛星バス契約受注(011)
■米国宇宙軍は衛星燃料補給に懐疑的 (013)(図-4)
■Oracle-M燃焼試験はシスルナー宇宙状況認識と国家安全保障におけるSSCおよびAFRLのマイルストーンである (018)(図-5)
■Sierra Space社は宇宙軍プログラムの航法衛星地上デモ完了(023)
■ドイツの防衛企業がIceye社と提携してSAR衛星を製造(024)
■中国はTJSヤオガン機密衛星シリーズに2回の打上げを追加(037)
■米国上院は「ゴールデンドーム・コーカス」を結成(040)
■SES Space & Defense社が米国国防総省にハイブリッド宇宙ベースのアーキテクチャを提供(055)
■ユーテルサット・ワンウェブ社とカイメタ社が世界各国の防衛インフラを強化するためのマルチオービットSATCOMサービスを発表(056)
■トランプ大統領は宇宙軍の将軍を1750億ドルのゴールデンドーム・ミサイル防衛計画の指揮者に任命(060)
■ミッション対応通信のマルチオービット等で防衛能力を強靭に(070)
■防衛調達改革でゴールデンドームが真の機会に(076)
■米国宇宙軍はGPS IIIF衛星2基を5億970万ドルで発注(081)
■2031年までに10,000基以上のソフトウェア定義衛星が軌道に投入(005)(図-1)
■米国は地球低軌道での経済と防衛のリーダーシップを危険にさらす(016)
■Rheinmetall社とICEYE社は衛星開発合弁会社を設立(031)
■小型衛星が静止軌道市場をどのように再形成するか?(033)
■国防総省は商業・軍事衛星ネットワークを構築のために企業を取込む(036)
■スペースデブリ危機は国家安全保障上の脅威となっている(039)
■原子力電池のスタートアップ ゼノ・パワー社が5,000万ドルを調達し、宇宙と海上での事業拡大を実現 (043)(図-11)
■中国がAI宇宙コンピューティングコンステレーション用の2,800基の衛星の最初の衛星を打上げ(044)
■Landspace社は強化されたZhuque-2ロケットで6衛星を打上げ(049)
■ExoTerra社がSDA衛星に21基の推進モジュールを納入(077)(図-24)
■自律型宇宙革命による保守主義の克服(079)
【打上】■ファイアフライ社のアルファ・ロケットが打上げられたが衛星軌道投入に失敗(006)
■オーストラリアのギルモア・スペース・テクノロジーズ社が50年以上ぶりの軌道打上げとなるエリステスト飛行初打上げを準備 (026)(図-9)
■Rocket Lab社はMynaric社との契約をコンステレーション計画の鍵と見なす(030)
■Rocket Lab社の2つのVarda宇宙船の地球帰還ミッション (041)(図-10)
■INNOSPACE社がSaturn Satellite Networks社と戦略的覚書を締結し小型衛星の開発/打上げを開始(042)
■ヴァージン・ギャラクティック社は新型スペースプレーンの生産が順調に進展(046)
■インドのレーダー画像衛星のPSLV打上げが失敗(051)
■インパルススペース社がSES社衛星を打上げる(068)
■INNOSPACE社はHANBIT-Nanoの打上げを2025年後半に延期(071)
■スターシップは軌道飛行中に姿勢制御を喪失し再突入時に解体 (075)(図-23)
■ノースロップ・グラマン社はファイアフライ・エアロスペース社に投資し、エクリプス推進(083)
■Ursa Major社は極超音速用ドレイパーエンジンの飛行試験を行う空軍との2,850万ドルの契約獲得(004)
■国防総省の極超音速機マイルストーンであるストラトローンチの再利用可能機体がマッハ5を突破(014)
■Rocket Lab社のニュートロン・ロケットが米軍の実証試験参画(025)(図-8)
■米国の防衛におけるSpaceX社の役割が拡大(047)
■SpaceX社がGPS III衛星を記録的な短時間で交互に打上げる(080)
■Rocket Lab社は主要な防衛請負業者の地位を確保へ(086)
■ロッキード・マーティン社は固体ロケットのスタートアップ企業X-Bow Systems社への投資を拡大(035)
■ビーナス・エアロスペース社は米国初極超音速エンジン飛行試験完了(061)(図-14)
■ドーン・エアロスペース社がオーロラ弾道スペースプレーンの販売を開始(065)(図-17)
■Rocket Lab社が衛星ペイロードメーカーを2億7500万ドルで買収(074)
■ロケットが多すぎますか、それともロケットが少なすぎますか?(082)
■中国の衛星打上げスタートアップ企業がロケット垂直打上げと機体着水テストを実施 (085)(図-25)
■中国のAstronstone社は「箸」回収方式のステンレス製ロケットの早期資金を調達へ(087)
【その他】■ラディアン・エアロスペース社が再突入機の計画を発表(001)
■ロッキード・マーティン社がアルテミス2号のためのオリオン宇宙船をNASAに納入 (007)(図-2)
■ホワイトハウスの予算案ではSLSとオリオン計画が段階的に廃止、ISS運用縮小 (008)(図-3)
■レジリエンス月着陸船が月周回軌道に突入(021)
■火星での人間活動の準備のために最善の方法は月です(022)
■NASAの2026年予算案の宇宙探査への影響(038)
■中国が5月28日に小惑星サンプリングミッション「Tianwen-2」を打上げ(052)
■NASAは長期にわたる予算不足がISS乗組員と研究の削減の可能性(057)
■スターフィッシュスペース社がドッキング実証を開始する準備が完了と発表 (058)   (図-13)
■Blue Origin社がBlue Moon月面着陸船の輸送作業を更新 (062)(図-15)
■米国上院はNASA長官にアイザックマン氏指名投票を6月上旬に設定 (067)   (図-18)
■SteamJet社のウォータースラスターがArtemis II cubesat軌道補正用に採用(072)
■Firefly Aerospace社はUAEのRashid 2ローバーの月の裏側への投入をBlue Ghostミッションに追加(073)
■NASAの予算は何十もの科学ミッションをキャンセルし数千人を解雇見込み(088)
■DARPAがLASSOの要請を通じてLunar Assayを公開(015)■中国の有人宇宙船「神舟19号」が地球に帰還。183日間宇宙滞在(009)
■中国が天宮宇宙ステーションに新モジュールを打上げ(028)
■MDA Space社はNASA Gateway計画がキャンセルされた場合のロボットアーム技術の適用先を検討(034)
■Ovzon社はヨーロッパの顧客から570万ドルの更新注文を受注(063)
【国内】■Aerospacelab社が三井物産エアロスペース社を通じてJAXAの宇宙船契約を受注 (010)(図-19)
■Rocket Lab社が複数回打上げ顧客であるiQPS社のミッションを予定(017)(図-20)
■JAXAはH3ロケットの“30形態”の燃焼試験を実施予定 (027)(図-21)
■エンジン交換によりispace社の月面着陸船ミッションが遅れる(029)
■JAXAのソーラー電力セイル実証機「イカロス」が運用終了(048)
■Rocket Lab社がiQPS社レーダー画像衛星を打上げる(050)
■日本のiQPS社が8機のSAR衛星打上げを予定(054)
■レーザー光を使った推進技術の実証に東北大学等が成功し(066)
■国内Space One社とSpace BD社が防衛省衛星の打上げ受注 (084)(図-22)